1ー2、『1ー1』の真実

作者注:今回のストーリーは、前回『1ー1』の視点を変えたもので、内容は同じです。


 『ゴオオォ~ン、ゴオオォ~ン』


 鐘のような音が鳴り響いた。 何かの合図のようだ。


 大音響と共に、衝撃波ソニックブームが駆け抜けた。


 衝撃波ソニックブームは壁に木霊こだまし、更に威力を増した。


 その効果で、部屋全体が共鳴し、俺がしていた机や、座っていた椅子が、まるで巨大地震のように、ガタガタと音を立てて大きく揺れた。…そのせいか、俺は地震の夢を見ていた。



 …ある程度、振動が収まった頃…


「軍議を、中断する」


と言う低い声が響き渡った。


 …先程さきほどの轟音は『休会』を知らせる合図だったらしい。



「おい」


 今度は、部屋中を見渡せる、高い場所から声がした。


 そこには、荘厳な装飾がほどこされた『玉座』のような椅子があり、あの少女が座っていた。


 少女は、徽章きしょうやら勲章やらがジャラジャラと付いた軍服を身にまとっている。


 その仰々しさとは不均衡つりあいな、白く華奢きゃしゃあしのぞかせているが、軽く組んだあしは小刻みに揺れている。


 苛立いらだっているのは、誰が見ても明らかだ。



「お! い!」


 先程さきほどより大きな声で、少女は、俺の横に突っ立っている巨大なヒキガエルのような兵士に声をかけ、何かを顎で指示した。


 ヒキガエルは、「へぇ~い、へい」…と、何とも間延びした声で返事をすると、眠っている俺に顔を近づけ、指を立てた。


 『指』と言っても、その指はダンプカー程もある! 


 それを無遠慮に俺の背中に当てて、「お~い、起きろや」と言って揺さぶったもんだからたまらない!


 俺は何かに押し潰される夢を見る羽目になった。


 おまけに、顔を近づけたそいつの口からは、絶えず溶鉱炉のような、灼熱の息が排出され、その上、物凄くくさい。


 …ヒキガエルは振り返り、少女に向かって、


 「だ~めだ、起きねぇや」


 と報告した。


 少女は厳しい顔をヒキガエルに向け、舌打ちしながら、


 「さがれ。 貴様は本当に役に立たんな…」


 と言った。



 …こいつ、この前少女が言っていた、いつも「腹減った~」って言ってる、役立たずの兵士かあ!



 少女はさっきも使っていた小さな装置に、何か告げた。


 同時に、俺の前にメラメラと燃えているような輝きを放つ、『焔の龍』のような兵士が出現した。


 少女が「軍医、此奴こやつが例の現地人なのだが、何故か自分の頬をつねったと思ったら、気を失ってしまったのだ。診てやってくれんか。」と言った。


 「はっ!」


 軍医が答礼し、振り返って俺を覗き込んだ。


その瞬間…


俺は、目を覚ました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る