第四章『襲名』

1ー1、俺は、ずっと『対岸の火事』だと思っていた ※閲覧注意(全年齢対象ですが、やや生々しい描写があります。)

 突如、轟音と共に、大地が割れた。


 アパートの天井が崩れ落ちたのか、背中に激痛が走り、押し潰された。


 いくら藻搔もがいても微動だに出来ない。


 追い打ちをかけるように、肌を焦がす熱風が俺の身体に容赦なく吹きつけた。


 激痛と、猛烈な熱に耐えながら、俺はある事を思い出した。


 『火災旋風』


 …科学が発達した現在に於いても、未だに、そのメカニズムが解明されていない現象の一つだ。


 震災や空襲で、大火災が発生すると、この現象が起きると言う。


 この災厄により、おびただしい数の尊い命が奪われてしまった。


 火災旋風の恐怖から逃れ、奇跡的に一命を取り留めた、ある老人は、こう証言している。


 「巨大なほのおの龍が、人々をみ込んで、天に昇っていった」


…と。


 これは、迫りくる『死』の恐怖が見せたまぼろしではない。


 火災旋風の正体は『巨大な焔の竜巻』なのだ。




 俺には関係無い事だ…と、ずっと高をくくっていたのに…。


 まさか、こんな事が起きるなんて…。


 人生って、こんな唐突に終わりを迎えるものなんだな。




 …そんなことを考えていると、それは、出し抜けに起こった。


 圧迫されていた背中が軽くなったのだ。



 た、助かった!?




 …と、思っていた俺を、


 巨大な『焔の龍』が覗き込んでいた!

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