3、涙

 少女はうなずきながら真剣に話を聴いてくれた。


 …俺の話が終わると、少女は胸を押さえ、「この締め付けられるような、痛みに近い感覚は何だ?」と聴いた。


 「多分、それは俺の悲しみが君の心に届いたあかしだよ」


 …少女が顔を上げ、俺の顔を再び見ると、その目からは涙があふれ出していた。


 少女が再び「自分の意思で制御出来ない、この目から次々に流出する液体は、一体何だ??」と聴いた。


 俺も泣きながら「それは『涙』だよ。 …君がいのちの大切さを理解してくれた証拠だよ」と教えた。


  少女は「ふぇっ…ふぇっ」と、しゃくり上げていたが、表情が崩れ始め、赤ちゃんが大声で泣き叫ぶカウントダウンの表情になった!


 うわっ! これはヤバい!


 俺は押入れから急いで枕を取り出して、すかさず少女に差し出した。


 「な、泣くならこれで口を抑えて! 隣近所となりきんじょに声が聞こえたらまずい!」


 少女は枕をひったくるように受け取り、顔をうずめて泣き出した。


 なんか小難こむずかしい事を言ってたが、まだ子供なんだな。




 …しばらくして再び落ち着きを取り戻した少女が口を開く。


 「…貴様も『ナミダ』を流していたな…やはり胸部が痛むのか?」


 「痛みなんてもんじゃない。張り裂けそうだよ」


 「…は、張り裂ける!?…それは、さぞつらかろう! …その胸痛きょうつうは『タベナ』で治療できるか?」


 と言いながら、心配そうな表情で、さっきの残りのおにぎりを、俺に差し出してくれた。


 俺は、思わず吹き出してしまった。 優しいなのは、間違い無さそうだ…。

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