3、少女

 さっきまで落ち込んでいた事などすっかり忘れて動画に魅入みいっていると、公園の入口の方から「うぅ~っ」といううめき声がした。


 ふと目をやると、小? 中? 学生くらいの少女が倒れ込んでいた!


 俺は慌てて駆け寄り、必死で呼びかけた。


 「おい、しっかりしろ! いま救急車を呼ぶから…」と言い終わる前に、少女の…



 …腹 の 虫 が グウ~~… と鳴った。


 …どうやら


 …腹 が 減 っ て る だ け のようだ。


 安心した俺は「な~んだ、腹が減ってただけか」と話しかけた。


 少女は弱々しい声で


 「わ、わからない。この肉体に細胞配列変換してぐに腹部に違和感を感じたが、惑星が3回自転した頃から目眩めまいしょうじ、その下肢かし上肢じょうし、更に全身の筋肉が弛緩しかんし、直立姿勢ちょくりつしせいたもてなくなってしまった…。こんな経験は初めてだ」


 可愛らしい声ではあるが、ヤケに小難こむずかしい言葉使いをする。


 『惑星が3回自転』? 小学校で習ったよな…。


 「…3日も食べて無いって事か! 回りくどいなあ! 何か買って来るから待ってて !」


 少女をかかえてベンチに寝かせ、俺は全力でコンビニに走った。




 コンビニの陳列棚にズラッと並ぶ食料品の数々を目にして俺は悩んだ…。


 …女子は…何を食うんだ?


 どれもこれも、美味うまそうだなぁ〜


 …と、あれこれ悩んでいると、救急車のサイレンがこえ、ふとわれに返る。


 少女の事を思い出し…


 しまった! またやっちゃった! 優柔不断が俺の悪いところだ。


 …目に付いたおにぎりと麦茶を買い、『無事でいてくれ!』と念じながら公園に走った。

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