第3話 艦橋
戦いの最中の艦橋で、海自指令はもたらされる報せに驚愕していた。
「護衛艦”えじぷと”沈没! ”みにすかじぇいけい”沈没! ”きたのくにから”くるっと回って沈没!」
「ばかな……何かの間違いだ」
「”おんたまのせ”一風変わった大破! ”もこにゃん”斜め45度沈没!」
「これは夢なのか……」
「司令!」
しかしオペレーターのような女子が次に言った言葉は司令を勇気づけた。
「”やまと”前に出る模様!」
”やまと”と呼ばれた艦は旗艦の後方にいた。
その艦影は最新鋭の”まっしぶ”と同様に、異様といえる。
まっしぶが例えるなら小型最先端のハイテク艦だとするならば、やまとはその対極にあるような艦影である。
巨大、強靭、剛健。そう形容するにふさわしい堂々たる艦体で、かつての大艦巨砲主義を回顧させるような見事なる艦であった。
しかしやまとは墓場から蘇った老いぼれではない。
いや、やまとこそが海自が誇る最新鋭の護衛艦だといってもいいだろう。
まっしぶが対マグロ戦に特化した漁船型護衛艦であるのに対しやまとは純然たる戦闘艦種として設計されている。
なにを隠そう、やまとは史上初宇宙を航行可能な大型艦船なのだ。
正直なところ宇宙戦艦だと言っても良い。
厳密に言えば宇宙戦艦ではないのだけれど、でも広い意味では宇宙戦艦やまとだと言えなくもないのだ。
そのやまとがこの窮地に身を挺して現れたのだから、司令の興奮は絶頂だといえよう。
そのやまとがついに、宇宙戦艦たるブースターに火を灯し。その推力をためはじめる。
そして「豪っ」という爆音とともに思い切り火を噴かすと、そのまま宇宙へ飛んでった。
「なにしに来たんだ……」
司令の落胆もうなずけるだろう。
「司令! 敵中型マグロ急速接近! 回避間に合いません!」
「総員、耐ショック姿勢を取れ!」
次の瞬間、まっしぶ艦橋を凄まじい衝撃が襲い、艦全体が激しく揺れた。
「くっ……被害状況報告ー!」
「第一艦橋大破! 第二艦橋大破! 第三艦橋大破!」
「落ち着けぇ!……はっ!?」
司令がオペレーターに目をやるが、彼女の様子がおかしい。
「敵の潜水艦を発見! 駄目だ! 大和魂を見せてやる!」
オペレーターは錯乱しているかのように口々に意味のわからぬ言葉を叫んでいる。
その様子を見て司令はすぐに直感した。
「くそ、”マグロ酔い”だ……!」
マグロ酔いとは、マグロから発せられる闇のダークパワーによって人体が冒され精神状態に深刻なダメージを負った状態のことである。
いかなる人間でもマグロ酔いから逃れられることはできず、精神の弱い者ほど早く陥る。
そして一度こうなってしまうと、家に帰るまでは治らない。
「早退させてやれぇ! 畜生、マグロハンターどもは何をしてるんだ!」
司令の脳裏に、マグロハンターと呼ぶにはいささか若すぎるあの英雄と呼ばれた少女の姿がよぎった。
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