第18話 盟友
グラディエーナが空中でつららを無数に作りだしエレナと美琴に向けて勢いよく放つ
しかし美琴による見事な剣技でつららを全て弾き返す
グラディエーナ&ノーラとエレナ&美琴の戦いが始まりおよそ10分ほど、それほど互いの実力が拮抗しているのだろう、かなりの接戦のように見えた
しかし接戦とはいえ双方汗もかいておらずむしろどこか余裕が見える
互いの実力の探り合いと言ったところか
「ふふふ〜あなたがた2人の能力は把握してますよ〜グラディエーナさん、あなたは氷結魔術の適性が異常なほど高いですね、だからあなたの魔術構成はそれをメインとした火力型、魔力にものを言わせて氷結魔術を炸裂させまくる戦法は実に厄介です〜」
魔術構成とはつまり自分の使える技構成のこと
自分の得意な魔術の火力を上げたり、逆に不得意な魔術に抵抗できるようにしたりと自分の得手不得手を理解しているものだけが完全に力を発揮することが出来るものである
「分かりやすくていいじゃろ?」
「えぇとっても素敵です〜。あなたが魔術を放ったあとの痕跡は大きなクレーターとなり一種の芸術です〜」
魔術の威力は高ければ高いほど周りにも被害がある
大きく地割れしたりクレーターができたりして相手を威圧することも出来る
「それとノーラさんあなたの魔術構成はグラディエーナさんとは逆で複雑怪奇。私の方としてもどうしてそこまでの実力をつけることが出来たのか分からないんですよ〜」
「まぁ全盛期の200年前私とマリーはグラの後ろで控えてたからあまり知られてないのよね、だからこそ私たちを知ってる人は逆に警戒するでしょ?」
「いや怖すぎますよ〜サクシャ様から頂いたあなたの情報はきっと3割ほど。あのお方の目を誤魔化すなんて不敬ながらもお見事です」
こんな会話をしている間もグラディエーナとエレナ、ノーラと美琴の激しい戦いは続いている
「ところでお主のその魔術、魔王軍幹部が1人重圧王ことアラスレイのものじゃないか?」
「ふふふ〜さすがは元幹部の唯一の生き残り。アラスレイ様の能力もご存知ですか」
「素質は魔王だけのものかと思っておったが魔王の周りのものたちも使えるというのか?」
「もちろんですよ、あの方は幹部の方々がやられた瞬間能力だけを自身に取り込みそのまま継承され続けてきました。」
「そうか…やつらは魔王の中で生きておったということか…」
(いやこの人達この戦いの中普通に会話してんのか)
一方、明人は別次元な戦いの邪魔にならないように隅っこで観察していた
観察しているのはいいが正直何が何だかよく分からない
(グラさんとエレナって人の戦いはまだいい。魔術のぶつけあいで2人とも対して移動してない、攻撃をかわす時くらいか)
明人は次にノーラと美琴の戦いを見る
(なんだあれ目でも追えないし剣と爪がぶつかり合ってる音が超聞こえてるし見えてないだけですごいことになってるんだろうな)
戦闘を見てろと言われたがむしろ何を見ていればいいのか分からなくなって何となく眺めることしか出来ない
とにかくノーラと美琴が早すぎる。よくよく聞いてみると風をきる音も聞こえてくる。
(まぁもしかしなくてもあっちの2人もあれレベルのスピードで動けるんだろうな…)
そんなことを考えてる時だった
なんの音もたっていないが何かが墜落したようなそんな衝撃に襲われたのだ
「お主の能力か?」
「私は何もしてませんよ〜グラディエーナさんが何かやったのかと思いましたよ〜」
グラディエーナが他のふたりの様子を伺うもなにかした素振りは見せておらずむしろ今の衝撃に気づいてないようだった
そんな様子を眺めつつエレナは人差し指でこめかみを押える
「はい。あ、サクシャ様〜。どうなされました?はい、はい。かしこまりました。ではそちらにすぐ戻ります。現在グラディエーナさん達と接触してますが…はい。かしこまりました。では後ほど御身の前に。」
指を話すと姿がきえ、また現れたと思ったらノーラと美琴の間に割り込みノーラの爪と美琴の剣を素手で受け止めた。その表情は至って真剣。先程のふわふわした表情をしていた人物と一緒とは信じられない。
「美琴、サクシャ様からのご命令よ。撤退するわよ」
「え、でも…」
「聞こえなかった?サクシャ様からのご命令よ?」
「わかりました…」
美琴が同意するとエレナの表情は先程のふわふわした表情に戻る。
「誠に申し訳ないんですけど急用ができてしまいまして、私たちはここで撤退させてもらいます〜」
「ふん、意外と上の者にはペコペコするんじゃな。忠義が厚いようで感心するわ」
「この世界はサクシャ様が絶対ですので〜。では、私たちはこの辺で〜」
「逃がすわけないじゃろ。お主らは想像以上に強者じゃ、ここで仕留める」
「やめておいた方がいいですよ?」
エレナが明人の方を指さす。そこでようやく明人自身も自分の首に石でできた尖ったものが突き立てられていることに気づいた
「卑怯なんて言わないでくださいよ〜?グラディエーナさん、私が手を出さないと言ったとはいえ信用しきれずたまに明人様のことを気にしてられましたね〜?だからあなたは全力を出せなかった。」
「…」
「あなたと本気の勝負をしたかった。ではまた〜」
エレナが手を振ると美琴は勢いよく地面に剣を突き立てた
その瞬間その周囲だけ大きな衝撃波が響き渡り勢いよく空へ飛んでいった
パラパラと砂埃が落ち、途方に暮れたグラディエーナ、壁に手を付きつつ息を整えるノーラ、そして座り込んだ明人の3人がその場に残されていた
「ねぇグラ。マリーを探そう?何とか吹き飛ばなかった部屋がまだあるしどこかにいるかも」
「いやその必要は無い。そうじゃろ?マリー」
すると成人男性1人分くらいの大きさの岩が突然倒れた。そこから現れたのはボロボロの体の赤毛の美少女だった
「えぇ…グラディエーナさんの氷の盾のおかげで何とか…」
その美少女は特徴的なほど丸い目をしておりその瞳も真っ赤だった。赤毛の中から除く赤色の耳は一周まわって不自然さを感じさせずに髪型の一部と思わせるほどだ
「けが人に無茶させちゃって相変わらずね。大丈夫?マリー」
「えぇ何とか…。久しぶりですね2人とも。また会えて嬉しいです。ところでそちらの殿方は…?」
「なるほど。明人さんですか、改めまして私はマリー、今はこんな見た目ですがヘルケルベロスというモンスターです」
マリーは先程グラディエーナにより服装をノーラにより怪我を修復してもらい明人と向かい合っていた
「のぅマリー。単刀直入に聞くがあのエレナと美琴にどこで見つかってどうやって囚われたんじゃ?」
「私は2人もご存知の通りこの形態なら人間と何ら変わりないです。…どうしました?明人さん耳の方を凝視して。何も無いですよ?」
「いや、何ら変わらないって割には目立つところに耳があるなと」
「そうですか?今までの100年間くらいは一般人にはバレたことないですけど…」
「あれぇ??」
「明人くん、真面目な話してるんじゃ。ちょっかいなら後にしてくれ。マリーの耳なんか凝視しない限りは見えんじゃろ」
「いや俺も真面目だしちょっかいかけてるつもりはねぇけど…凝視しなくても見えるっつーか…俺がおかしいのか?」
「…まぁそれは置いといて、私も2人とまた再開した時のためにのちのち役に立つだろうとお金を貯めていたんです。そこで私の働いていた雑貨屋さんにあの二人が現れたんです」
そこからの話は展開が早かった
2人が店に来て、何か嫌な予感がしたマリーはとっさに店の奥へ。しかしエレナがモンスターの気配がすると言い出し店主に問いただすも店主自身マリーがモンスターなんて知らなかった。(ここでまた明人がなんでバレないんだ?と言い出したが他のメンツは無視)
そのため隠していると思い込んだエレナは店主に手をかけようとしたところでマリーが飛び出たとの事。
現在その雑貨屋の店主はマリーの存在はおろか、マリーがそこで働いていたことさえ覚えていない。そういう魔術を先にかけておいたのだ
「しかしあの二人も見かけによらず嫌な趣味を持っておるな…そんなに痛み付けなくていいじゃろうに」
「あの二人は尋問はしましたけど手は出しませんでしたよ。彼女の配下たちに強姦されたりしてできたキズです」
「あー…」
グラディエーナが辺りいったいを見回すと男たちが倒れ伏している。
「この支部を担ってるのはあの二人でこの男たちは護衛。護衛依頼だけして自分たちが何故ここに住み着いたのかすら言ってないんじゃろうなぁ」
「つまりこいつらは何も知らずに死んだってわけね。まぁマリーを犯した罪は死んでも償えきれないけど」
ノーラがマリーに回復魔術を使っているなかグラディエーナが明人の近くに歩み寄る
「ま、そんな落ち込むことは無いぞ。今回は見ることに意味があった。ワシは先にそう言ってあったはずじゃ」
「そうだけど、俺がいなかったらエレナってやつ取り逃してなかっただろ…」
「それは間違いないのぅ。連れてきたのはミスかと思ってしまった。しかし無駄なことはあっても無意味なことはないじゃろ。明人くんはノーラと美琴の1戦で目が追いつかないからと諦めたか?追いつこうとしたじゃろ?それは今は無駄になったかもしれんがのちのち絶対役に立つ。無意味にはならんぞ」
グラディエーナは手頃な石ころを拾い上げ指ではじいた
しかしその速度は以上。向かいの壁に穴を開けたのだ
「今の石、目で追えたかの?」
「え、えっと…」
「もう1回行くぞ?」
グラディエーナがもう一度石を指ではじく。速度としては先程と同じ。またも向かいの壁に穴を開けた。
「今の石、実はノーラや美琴の一手の方が早い。むしろあの戦いでさっきの石の速度は遅すぎる。」
そう。自転車に乗ってる人を見た後に歩く人を見るととても遅く感じる。理論としては簡単。
「明人くんはあまり言いたくなさそうじゃが竜殺しじゃろ?」
「えっ」
「オーラから分かるぞ。というか竜殺しとは関係ない不思議なオーラも会った時から感じておった。…ドラゴンの血は浴びた者の身体能力を倍増させる、そのドラゴンが強力であれば協力あるほど血は濃くなる。」
つまりグラディエーナが何が言いたいのか。明人は薄々察した
「あぁ。目で追えたよ。壁にぶつかるまでちゃんと」
そう。見えてしまったのだ。石の軌道を。そして、
「あの、グラ?」
「ん?」
「さっきから砂埃すごいんだけど?」
石が壁にぶつかりその砂埃がノーラとマリーにかかっていることに
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