第17話 強敵
「よーし着いたぞ、ここか〜マリーが捕まっているところは」
グラディエーナの魔術、というよりテレポートにより明人とノーラ、そして今までの経緯を全て解説された萌が古びた砦のような建物の前に立った
「それでそれで!グラさんは勇者一行と対峙した時なんて言ったんですか!?」
「『何人か幹部を屠ってきたようじゃがわしの氷はなかなか硬いぞ?』」
うっきうきで話を聞く萌とそれに載せられてノリノリなノーラを前にグラディエーナは顔を両手を抑えていた
「グラさんかっこいい!!」
「あの頃のグラって言ったらね…ぷぷぷぷ…」
「勘弁してくれ…」
敵の根城だと思われる砦の目の前で緊張感の無さすぎる空気感に明人は呆れつつ一応話は聞いておく
「あの頃のグラなんて呼ばれてたっけ、あぁそうそう!白銀のグラだったかしら!得意魔術の氷を放つと敵は白銀に染る、それが由来だったかしらね!」
「もう勘弁してくれ激風のノーラ」
「わっ私の2つ名は関係ないでしょ!?」
「2人ともかっこいい!!」
「「かっこよくない!!」」
(こんな調子で大丈夫かこの人たち…)
「さて、これから敵のアジトに踏み込むわけじゃが明人くん、萌ちゃん、くれぐれも慎重にな」
「どの口が言ってんだ」
急に真剣な表情になったグラディエーナにさすがに明人はツッコんだ
「まぁまぁ、さっきの怒りに任せて突っ込んでくよりはこの空気感の方がいいでしょ?」
「それはそうだけど…」
明人は萌をちらっと見る
「?」
不思議そうな顔を萌はするが明人はすぐ顔を逸らす
「よし。行くぞ」
前からグラディエーナ、明人、萌、ノーラの順で静かに砦の中を進んでいく
ちなみに入口は開いており罠を疑ったがそんな様子もなく普通に入った
どうやらマリーが捕らえられているのは二階のようで1階は誰もいないようだった
電気も着いておらず全ての扉が開けっ放しだったのだ
もう遅い時間で何よりこの砦は森の奥の奥にあるようで光が入り込む様子もない
ではなぜ灯りがないのに進めているのか
これはグラディエーナ達の魔術のおかげでもある
触れている者は暗闇でも昼間のように視界が見えるのだ
そのためグラディエーナは明人にノーラは萌に触れながら進んでいく
(でもさすがに不用心過ぎないか?森の奥とはいえテレポートって言う移動手段がある限り絶対安全なんてことは無いだろ)
ちなみにこの世界のテレポートは建物の中に移動することは出来ない
万が一できてしまったら不法侵入し放題となってしまうので人間としてはある意味好都合だが逆に好都合すぎる、まるで世界がそう作られたかのようだ
魔術をこの世界に広めたのは不明
広めた張本人が都合のいい魔術に作りかえたのかもしれない
そんなこんなで一行は階段の前で立ち止まった
グラディエーナが簡単なジェスチャーをし、ほか3人が頷き上に上がっていく
そのジェスチャーの意味は
「ワシ」「上に」「行く」「後ろ」「付いてこい」だった
が直ぐに足が止まりグラディエーナが上を鋭い目で見据えていた
その視線の先には黒髪に一筋の赤い毛でできた線の女だった
「おんやぁ?見覚えのない人がいますねぇ?お客様ぁ?それとも警察ぅ?それともー」
女は美形で笑顔も魅力的だと思われていた、しかし見せた笑顔は邪悪、口が釣り上がり目は細められギラギラとこちらを見つめ
「愛しのマリーちゃんを迎えに来たお仲間さんですかぁ?」
「マリー?はっ誰じゃそいつは。そんな名前の仲間なんかおらんぞ」
「ほんとですかぁ?じゃあ今すぐにでも殴りかかってきそうなその手、私を殺してしまいそうなその目はなんなんですぅ?後ろの金髪ちゃんもそんな顔しないの、可愛いお顔が台無しだよぅ?」
「お主がここのボスか?」
「正解〜、でもちょっと不正解かなぁ」
女は手を自分の頬に当てニコニコとしている
「私は確かにここを任された偉い人。でもここは支部でしかないの。あなた達はサクシャ様から聞いてるわ、グラディエーナ、ノーラ、そして明人君と萌ちゃんね?」
「ほぉうつまりイカれた宗教の1部か」
「ふふふ〜宗教なんてどこかイカれてないと信仰なんて出来ないのよ」
「自覚あり、か。というか」
グラディエーナがばっと手を下に向け魔術を発動する。
階段が一瞬にして氷漬けになる
「いつまで上から見下げてるんじゃ」
しかし女の位置だけ床が伸び凍らずに済む
「それは確かに失礼しましたぁ。じゃあぁ上に上がってきて貰えますかぁ?罠とかないんで大丈夫ですよぉ」
「罠がない保証は?」
「ないですぅ、サクシャ様には手厚く対応しろと命じられていますのでぇそんな面白みのないことしないとだけ言っておきましょうかねぇ」
本来、罠があるかもしれないと上に上がるのは愚策だがグラディエーナは上に上がる素振りを見せる
「ちょっ、グラさん?」
「大丈夫じゃ、あやつらは性格の破綻者なのは間違いないがサクシャへの信仰心は厚い、名前を出したということは間違いないということじゃろう、ワシを信じろ」
「…わかったよ」
ノーラもグラディエーナと同じ考えのようで疑うことなく氷漬けになった階段を上がっていく
(信頼度がすげぇ、グラさんもノーラに平気で背中を任せてる、これが長年付き添ってきた仲間か)
格の違いを色んなところで感じ、自分の無力さの憂鬱感に力が入らなくなりつつも上に上がる
「そういえばこっちだけ名前を知ってるのはなんかずるですよねぇ、私の名前はエレナ。以後お見知り置きをぉ」
エレナはへらへらとしながら頭を下げる
「次に会うことがあればいいんですけど♡」
上に上がりきって気づいたのだ、エレナの周りに銃を構えた敵が十何人もいることに
「サクシャ様のオキニの力見せてもらいましょぉ」
その言葉を合図に四方八方から銃撃
明人は萌を庇うように立ち咄嗟に剣を構えるが銃弾が明人達に当たるよりも先に砕け散っていたのだ
「んんん?氷の膜ぅ?なるほどぉ階段のあれはカモフラージュってだったわけねぇさすがですぅ」
「随分単純なもてなし方をするものじゃなぁ。お主らの手厚いもてなしとはこの程度かの?」
「ふふふ〜そんなわけないじゃないですかぁむしろこれは確認、この程度でやられたらそれまでってことですよぉ」
「とりあえず鬱陶しいからこやつら凍らせてもらうぞ?」
「はい、どうぞぉでも私を凍らせようとしないでくださいよぉ?」
「そんなことしたらお主のもてなしを受けられんではないか」
そんな会話のやり取りの最中、エレナの仲間たちが氷漬けになったり、空気が冷たくなったりしていた
「こちらも一応確認させてもらうとするかのぅ」
グラディエーナが手の上でつららのようなものを作り出しエレナに向けて放る
それはすごいスピードで飛びエレナにあたる1歩手前で茶髪で眼帯をした女が剣でつららをまっぷたつにした
「ナイスですぅ美琴ぉあなたがいなかったら死んじゃってましたよぉ」
「じゃあ止めない方が良かったですか?」
「酷いですぅちゃんと感謝してますよぅ」
「はいはい」
その瞬間美琴はブレたように消え気づけばグラディエーナとかなり距離を詰めていた
ーー間にノーラが割り込んだ形で
美琴の剣をノーラは爪で受け止めており爪と剣がカチカチと音を鳴らしながら震えていることから2人が競り合っているのがわかる
「ちょっとどうしてくれんの?手入れした爪傷つくじゃない」
「グロウキメラの爪ってそんなに柔いものだったんですね、激風のノーラさんもこの程度だったってことですね」
「その名前で呼ばないでくれるかしら?あんたたちみたいに過去に囚われてるわけじゃないのよこっちは」
ノーラが爪を振るい美琴と距離を詰める
「その女剣士隠しておったか」
「えぇ、この子は私の大事な相棒ですのでぇ」
「誰が相棒ですか、仕事仲間というやつです」
「えぇ冷たいですぅ一緒に仕事した仲じゃないですかぁ」
「それを仕事仲間って言うんですよ?」
(なんというか、あの二人の空気とここに入る前までのノーラとグラさんの空気が似てる)
結局、戦場というものは警戒するに越したことはない、が。警戒しすぎてもそれが体に慣れてしまい緊張感というものを感じなくなってしまうのだ
よってリラックスしている空気感、これが重要となってくる
そしてそれが一対一ではなく二対二の場合、コンビネーションが鍵となる
「頑張りましょぉー美琴ぉ〜」
「くっつかないでください、あなたを倒すのは私です死んでも死なないでくださいよ」
「ま、いつもの感じでいいんじゃないの?マリーがいないし66パーセントくらいってところかしら?」
「じゃな、明人くん、萌ちゃん、ちゃんと見ておくんじゃぞ?」
こうして、戦いの火蓋はきられてのであった
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