第16話 仲間

「世界の内側ってのは簡単に説明すると」

グラディエーナが指を鳴らすと赤や青等で彩られた球体が現れた

「これはこの惑星の魔力値を表すことの出来るものでな、青が魔力値が低く赤は逆に高いんじゃ。その中間の紫はまぁそれなりにあるということじゃな。ちなみにこの国は赤寄りの紫。ここら辺じゃな」

グラディエーナが指を指す先は確かに明るめの紫と言った感じだろうか。しかしそれよりも気になるところが1つ。

「なぁ、この黒いところはなんだ?やけに近いところにあるな」

明人達の住む国の真横に狭い範囲だが真っ黒な線がある。線としてはかなり細く、短いのだが実際はかなりあるのだろうと思われる

「そう、そここそが世界の内側と呼ばれる場所じゃ」

「場所?パラレルワールドとか別空間とかそんなんじゃないのか?」

「うーむ、あながち間違いでは無いんじゃよ。実はの、ワシたちも1度そこへ向かったんじゃ、黒というのは膨大な魔力の象徴。調査しに行く価値はあった。しかし見に行ったがそこはなんにもなかったんじゃよ」

そこでずっと黙っていたノーラが自分の爪を手入れしながら口を開いた

「魔力が濃いところってね、ダンジョンある無いに関係なくモンスターが出てくるはずなのよ、でもそこは何も無いただの平地。モンスターが隠れることも出来ない本当に何も無かったの」

「そこでマリーが言ったんじゃよ、もしかしたらこの場所には見えていないだけでもうひとつ空間があるのでは、と。ワシらも信じ難かったんじゃがその可能性の方が高いと判断し、色々調査してからまた3人で来ようと約束をしたんじゃ」

(この2人とその仲間のマリーって人が探し漏れすることは考えられないし俺なんかが思いつく意見は全部試したはずだ)

明人はノーラと出会い、対して時間が経っていないが魔力の技量がものすごいことを理解している

先程から意味もなく爪を見ているようにも見えるが長さや鋭さ、更にはネイルを自由自在に操っているのだ

モンスター故に種族によるものだと思ったがノーラ自身が否定した。

「まぁその後この石を見つけてのぅ。この石、明人くんはちょっと感じづらいかもしれんが微量ながら濃い魔力を放っておる。しかもずっとなんじゃよ、一種の永久機関じゃ。

まさかと思ってこの石を持って世界の内側に行ってみたらこの石が異常なほどの反応を見せた。」

「それでこの石を調査したら世界に12個しかないってわかってね。しかもそれは世界のあちこちに散らばっているの。それ全部集めたら世界の内側を覆い隠してる結界を開けることができるみたいなの」

「なるほど、思ったより話が壮大で唖然としてる…」

「おいおいもしかしたら今後星石探しを手伝ってもらうかもしれんからその調子じゃ困るぞ?」


「ところでノーラ、マリーの行方は知っておるのかの?」

世界の内側、星石などの新しいワードについていけなくなりつつある明人を放ってグラディエーナとノーラは座り込んで話し合っている

「それが私も分からないのよ。あの子は魔力を隠すのが上手いから人間の世界でも上手く隠れていると思うけど…」

「マリーの持ち物何か持っておらんか?ワシはちょっと持ってなくてのぅ。なんならお主ら2人の物を何も持っとらんかったんじゃよ」

「あーあるわよ、マリーから貰った髪飾り、これは元々の所有権はあの子だから行けるでしょ?」

「うーむ、所有権がノーラにうつってしまっておるからできるかはわからんがやるだけやってみるかの」

ノーラから髪飾りを受け取ったグラディエーナは手をかざし何かを唱えると空中にどこかの映像が流れ始めた

「相変わらず魔術ってなんでもありね。所有物からその持ち主の場所を探せるなんて。でもそんな便利な魔術があるなら何かしら私たちのものもっておけばよかっ」

「な、なんか建物が映ったのぅ!?どこじゃろうなぁこれは!」

「誤魔化すんじゃないわよ!…ってほんとにどこかしらねこれ」

映し出された建物は真っ暗な空間の中ぽつんと建っている二階建ての砦のような建物だった

「明らかに雰囲気が最悪じゃのぅ。マリーはこの髪飾りをどこで?」

「あの子の手作りよ。だから決して元々の所有者が居てそれを映してるわけじゃないわ」

「ふーむ。これはちと面倒なことが起きてるみたいじゃのぅ?」

「もうちょっと中まで入ることってできる?あの子がいるかだけ確認しましょ」

グラディエーナがそれもそうじゃなと手元で操作すると映像が一瞬ぼやけ新しい映像が出てくる

その砦の中の廊下を映したらしく明かりが灯っているので誰かいることは明白だった

「もうちょっと潜ってみるかのぅ」

そしてもう一度手元で操作する

「っ!!?」

「うそ…!」

そこには赤髪のツインテールの女の子が血まみれで磔にされていた

「マリー…っ!!」

どうやらグラディエーナとノーラの仲間のひとりのマリーらしく、2人は映し出された映像から目を離せずにいた

「拷問を受けているようね、何か尋問されて?てことはマリーが正体がバレた?相手は何者?」

「わからん…マリーしか映ってないし特定できそうなものもない。覗かれることを想定してるわけじゃなさそうじゃがマリーがここまでになるのは相当手練じゃろ」

グラディエーナはノーラに髪飾りを返してどこからか杖を取りだした

それは明人と萌の両親の一件で見せた杖。

「まさかあんた…!」

「グラさんもしかしてそこ行くつもりか!?」

「当然じゃ、そこらのモンスターの討伐はまだ許す、それで銭稼ぎをし生活している者もいる。人間同士の争いなら勝手にやっておればいい。じゃがワシはワシの仲間を傷つけられて平気でいられん」

グラディエーナと明人、戦闘力、魔力値、種族値全て明人が劣っており、敵意を自分に向けられた訳でもないのに心臓を直接掴まれたような冷えきった殺意を感じる

「私も行くけどこの子も連れてくの?それなりの実力者でしょ?勝負になる?」

「明人くんにはついてきてもらう。自分よりも実力が上の者の戦いは聞くよりも見た方が手っ取り早い。百聞は一見にしかずってやつじゃ、それにな、ノーラ」

グラディエーナが杖を振るうとさらに辺りには冷えきった空気で溢れかえる

「これは勝負じゃない。ワシらの仲間に手を出したつけを払ってもらう。退治じゃ」


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