第8話 素質
グラディエーナが元魔王の幹部という衝撃的な爆弾を放って2人は唖然としながら倉庫の近くの岩の前に立っていた。
「な、なんかやばい人が家の真下にいた」
「そ、その件は明日聞こっ。今日はもう寝よう明日に備えてさ!」
萌の言葉に明人が頷き家に戻る。しかし玄関に入った時異変に気づいた。
「「え?」」
いつもなら右側に靴の収納するスペースがあるシンプルな玄関だったはずだ。しかし
「あっれぇー?俺もしかして疲れてんのかな?まぁあれだけ特訓すれば疲れるに決まってるかーちょっと外の空気吸ってくるかー」
「そうだね多分疲れてるんだよ。こ、こんな、家がダンジョンみたいになるわけないじゃん!」
急展開過ぎて2人の脳が理解するのを放棄し始め1度外に出ようと振り返るもドアが気づけば無くなっていた
「おおおおおおおおいいい!!な、なんだこれ!どうなってんだ!我が家がダンジョンになってる!!」
2人の目の前に広がるのはまるで洞穴の中。所々に松明の光が見えるも電気が光ってるようには見えない。
「あ、あれか?浦島太郎方式か!?グラさんのところにいる間に100年ぐらい経っちまったのか!?」
「落ちついてお兄ちゃん!それなら外見も違うはずだよ!というか未知のダンジョンなんだから静かにしないと!」
その言葉に明人はピタッと止まる
「ちょ、ちょっとさっきから衝撃が多すぎて頭が回んないから1度まとめるぞ?」
萌が頷く
「俺たちふたりはグラさんの元にだいたい1時間くらいいた。帰ってきたら家の外見はそのままに中身はダンジョンになっていた。いや、は?」
話にまとめてみると余計に馬鹿らしくなってすごい顔をしてしまう
1時間の間に一体何が起きたというのか
考えられる可能性とすれば
「グラさんが俺たちをはめた?」
「言いきれないけど考えづらいよね。単純に目的が分からないし万が一ここを乗っ取るためなら私たちを生かして帰した意味がわからないよ?」
それもそうだ。圧倒的な力で2人を意志無き傀儡にすることだって容易かったはず。それに目的を語る必要もなかった。
とりあえずこれからどうするかを話している時、萌がピクっと反応する。
人差し指を立てこめかみに当てている。
「あ!グラさん!ちょうどいいところに!…え?…うん、うん、あー…うん、わかった。うん大丈夫。はい。はーい。」
いつの間に連絡をとる手段を準備していたのか。そんなことを考えるが今は助かった
「グラさんからか。なんだって?」
「えっと。私たちが地上に上がって少ししてから急に地下のダンジョンの魔力の質が跳ね上がったらしいの。それで試しに覗いて見たら地上ではありえないほどの魔力の発生源をこの家の最上階から感じたらしくて」
「最上階っつっても俺らの家元々一般的な二階建てだぞ…」
何階あるかは不明だが最上階と言うからには少なくとも5階以上と思っておいた方がいいのだろう
「グラさんが今から戦闘態勢を整えてこっちに来るらしいからここから動くなだって」
「グラさんが来るのは助かるな。俺と萌じゃダンジョン攻略するには分が悪すぎる」
グラディエーナを待つこと五分ほど2人の近くに突然魔術が発動し2人の後ろにグラディエーナが先程とは違う格好で現れた
「グラさん杖持って戦う派なんだ…」
先程2人で手合わせした時は杖なんか使わずに素手で2人を圧倒していた。武器を使うまでもなかったと言われたようで肩がガクッと落とす
「正直杖があると魔力が制御しやすいし威力も調整しやすいからのぅ。魔術全力ぶっぱできるところなら杖使わないんじゃよ」
グラディエーナの携える杖はおとぎ話にでてきた魔法使いの杖にそっくりで捻れた木の幹のような見た目で先端には赤色の宝石があり先程明人に渡した剣と同様かなりの逸品だと思われる
「さーて。立ち話はこの辺にしておいてダンジョン探索ーー」
グラディエーナはダンジョンの奥に杖を向けて
「いってみようかのぅ!」
ダンジョンを突き進んで行く3人は案外何事もなく上へ上へと進んでいく
「ダンジョンって割にはモンスターとか居ないな。見た目だけってやつか?」
「いいやちがうぞ明人くん。確かにここにはいないがなーんか上から大量の魔力を感じるんじゃよ。ここのダンジョンの主がモンスターたちを集めて何かやっておるようじゃな」
ダンジョンの主。勝手に家をダンジョンに変えたことは許せないがその正体が薄々分かる明人と萌は不思議な顔をする。
「お父さんとお母さんは無事かな。2人とも今の時間寝てると思うんだけど」
「どうじゃろなぁもしかしたら人質にされとるかも知らんのぅ」
3人がモンスターと遭遇せずにダンジョンを攻略し続けて、8階ぐらいになった時ダンジョンの雰囲気が急に変わる
長い道が続いていたダンジョンが急に道と言うよりは広場のように広がり不自然に置かれる扉がある
グラディエーナは警戒しながらもその扉を開け明人はたくさんの違和感に首を傾げていた
(なんかダンジョンの主の件もだけどさっきのグラさんの話と何か違う気がする…何だこの違和感)
自分の違和感を整理しようと頭の中でまとめていると突然部屋の中からマイクで反響されたような声が聞こえた
『レディースエーンドジェントルメーンッ!さぁさぁお立ち会い!昔ここに2つの種が植えられたァ!その種は伸びに伸びて花として咲き誇る!2つの花の香りによってきた3びきの虫のご登場!』
そこは闘牛などで使うリングのようなところで観客は全部モンスターで異常な盛り上がりを見せている
実況席のような出っ張っているところでは小さいパタパタ浮かぶコウモリのようなモンスターがマイクを持って大きく叫んでいた
唖然とする3人を前にコウモリの口上は乗っていく
『おおっとぉ!虫を駆除するために我らが主様の登場だァ!』
その声と同時に3人が入ってきた入口の反対側が勢いよく開き2つの人影が見える
目を凝らしよく見てみるとやはりと言うべきかそこには。
「父さん…!母さん…!!」
両手にはそれぞれ金棒を持ち鬼の見た目のーしかし2人の父の面影が残るー威圧感のすごい異形。
そしてもう1人は2人の母の顔はそのままに微笑み、大きな双丘を揺らしながら露出度の高い真っ黒な服を纏う女悪魔。
明らかに明人と萌の両親がそこにいた。
実家がダンジョンになった時点で薄々気づいてはいたもののいざ目にすると衝撃は強い。何より…
「母さん歳考えてくれよ…」
柔和な笑顔を向ける際どい服装をする母(今年38歳)を見てさすがの明人も呆れてしまう
「そ、そこじゃないよ!?お父さんお母さん!どうしたのその格好!」
萌の声が届いたのか2人は不敵に笑う
「お母さん達もよく分からないんだけどねぇ?急に魔力が跳ね上がってヒトならざるものレベルに強くなったから張り切っちゃった♡」
小さい声で明人が張り切っちゃったじゃねぇよとつぶやくも聞こえなかったのだろう、父が頷く
「あぁ母さんの言う通りだ。この魔力は父さんの若い頃の魔力を大幅に超えている。だから母さんと相談して私たちの魔力がどれほどなのか試す必要があるとな」
「素質を活性化されたものは自分の中で滾る魔力に高揚感を覚え自分の力に酔ってしまう。人の迷惑などもっての他。自分が壊れるまで魔術を振るうようになるはた迷惑な魔術兵器になってしまうんじゃ」
グラディエーナが油断なく杖をかまえる
「そ、そんな!じゃあお父さんとお母さんは…」
「わしも極力元に戻すよう気をつけるが成功はほんの1割弱くらいじゃな。そもそも初めてやるからもっと低いかもしれん…」
「そんな…」
『さぁさぁさぁ!!3びきの虫は我らが主様にどれだけ楯突くことが出来るのか!
READY…FIGHTっ!!』
コウモリの声に合わせてどこからともなくゴングの音が響く。
明人と萌は少し腰が引けているが直ぐに戦闘態勢に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます