第2話 200年後の先

魔王が勇者により退治されてから200年経ち世界には平和が訪れた。

魔王軍に対抗するための力だった魔術は今では生活水準をあげるための便利なものと成り下がりつつあった。

しかし、一定の人物はいつでも魔王が復活したとしても大丈夫なように剣や魔術などの訓練は欠かさなかった。

しかし魔王軍なんてとうの昔に滅ぼされたと思い込んでいる人たちも同じようにいた。そんな人からすれば来てすらいない敵に税金が持ってかれていると思うと不快に思われることもある。

そこで政府は小、中、高の学校で魔術と剣を学ぶ魔術学院に変更することにした。未来のある子供たちの能力が上がることを止める大人なんているはずもなくちゃくちゃくと子供たちは能力を身につけていくことに成功。

そして今、高校の生徒が魔術の授業を受けているところだった。


「ー突然だがみんなは魔術と魔法の違いが分かるかい?」

教師の問いかけに生徒がザワつくも誰も正解に辿り着けない

そんな様子を見て教師は苦笑する

「まぁ難しいよな。聞かれないと絶対考えないだろうし魔術師の1人である僕も答えにたどり着いたわけじゃない」

「先生に分からないことが私たちに分かるわけじゃないじゃなーい!」

生徒に1人の言葉に生徒たちは確かにーと野次を飛ばす

「いやいや君たちはその歳で魔術師としてすごいレベルまで来ているよ…ベタなこと言うけど君たちは僕とは違って若さがある。その若さを存分に活かしてくれ

さ!話が逸れたね。僕はね「魔術」が僕たちがよく見る攻撃だったり支援だったり術式からなる不思議な力。それに対して「魔法」は神々が扱える奇跡なのではないかと思っているんだ」

「先生は神様を信じてるの?」

「見たことないから信じるというあやふやな言い方になってしまうけどその通りだよ。

事実魔王がいた時代は神々がいたような書物なのが残っていたりするんだ。勇者も神様から能力を受け継いだと「魔法の旅」では書かれているよね」

「「魔法の旅」ってあの有名な童話?」

童話にしては最初の描写があやふやだったり後半は急に詳しい描写になったり。そんな不思議な童話が教室にいる全ての者の脳内でチラつく。

あの書かれ方はなんとも不思議だった。後半と言っても本当に最後の最後のシーン。魔王と勇者の戦闘シーンだけが鮮明に書かれている。まるでそのシーンだけは見届けていた第三者がいたかのように。

「そうそう!…また話が逸れてしまったよ

僕が言いたかったのははるか昔、あの童話の時代だから200年前までは魔術ではなく魔法が存在していたんだよ。でもいつからか突然魔法ではなく魔術が世界に広まったんだ。なにか引っかからないかい?」


授業が終わり、下校時間となり生徒たちは帰る準備を始める

「でもあの先生もなかなかな物好きだよなー

魔法でも魔術でも俺からすれば変わんねーよ」

「おいおい魔力適正0のやつがなんか言ってる」

「いいんだよ俺は剣使えるから」

魔力適性とは魔術を使うために必要となる魔力というものがある。これは体内にある器みたいなもので、その器が大きければ大きいほど魔力量が大きく器の深さが深ければ深いほど魔力が濃いと言われる。魔力量が大きかったり濃かったりすると魔術を放つ際に一般の魔術よりも威力が上乗せされたり他の人よりも多く魔術が使えたりする。

一般的に魔力適性は100あると言われる。胎児は50であるが小学校に上がる頃には100に近い数字にはなっているのがこの世界の理。

しかしそれが0ということは魔術の威力が弱いどころか魔術が使えないということになる

「神は二物を与えずとか言ってるけど嘘だ!俺剣しか取り柄ないぞ!」

「俺は剣の方が扱えるが魔法も必要最低限は使えるつもりだ。しかしいつかこの二刀流という構えが仇となるかもしれん」

先程から呻いている青年は軽く茶髪でどちらかと言うと整った顔をしたチャラチャラしたイメージのある。青年の後ろには剣が携えられていた。

そしてその話し相手となるもう1人の青年は伸ばした髪を結っており現代風侍のような姿だった。腰には剣ではなく刀を携えていた。こちらも整った容姿をしており美男2人が仲良くしているところを腐ってしまっている女子が見たら騒ぎ立ててしまうだろう。

「冬真お前死体蹴りが趣味か?」

「お前がそんなことで女々しい反応しているからだぞ。明人」

軽口を叩き合う2人。呻いていた青年-明人が「帰るか」と言うと冬真もそれに頷きついて行った。

そんな2人の様子を見て腐ってしまっている女の子が鼻血を流しているのはまた別の話。

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