魔王の素質
@sigunohon
第1話 世界の始まり
-むかしむかしあるところに悪い魔王と正義の味方の勇者様がいました。
勇者は弱き者が魔王の支配から逃れるために魔王の討伐に挑みます。それが彼の存在する理由だからです。長い道のりを超え仲間たちと共に長い長い時間をかけてついに魔王城へ立ち入ります。
魔王の配下との苛烈な死闘。勇者を除いて4人居た仲間たちは次々と倒れていきます。
4人の犠牲を乗り越えて勇者はついに魔王の玉座に辿り着きます。
勇者と魔王は対峙し一対一の勝負をしかけます。
戦闘開始直後から圧倒的な力を見せつけた魔王。勝負の結果を見送る魔王の配下たち全員が魔王の勝ちを疑っていません。魔王も最初から本気を出して勇者を相手していました。
しかし勇者には大きなダメージを与えることが出来てもとどめを刺すことが出来ませんでした。魔王ですら知らない能力のように思え魔王は恐怖するも悟られないように大きく叫びます。
「なぜ貴様はひれ伏さない!他のニンゲンより少し強いくらいの貴様が!!なぜ我の一撃を受けても立ち上がるのだ!!」
フラフラになりながらも勇者は剣でどうにか体を支えて魔王に反論します。
「はっ…それが勇者様の特殊能力ってやつだからだよ。神から選ばれた者は神から加護を受けることが出来る。俺はたまたま耐久性のある能力を貰った、それだけだ」
「神だと?そんなものがいるわけなかろう?例えいたら我を止めに来るはずだ!来ないということは存在しないということだ!」
「おいおい魔王さんよ悪魔や天使がいるのに神様がいないっておかしいと思わねぇか?まぁ神様からすればこの戦いも子供の喧嘩みたいなもんなんだろうよ」
勇者はふらつきながらも不敵に笑います。
押せば倒れてしまいそうなのに、しかし近づいたらなにかしてきそうな危険な予感。
しかし魔王は逃げの一手を打ちませんでした
「ふん、面白い。見え見えの挑発に乗るのは何百年前の話だったか」
魔王が手を開いたり閉じたりを繰り返し異常なしと判断するとどこからともなく漆黒の剣を出現させました。
柄の部分には真っ赤なおぞましい目が勇者を覗き込んでいる剣。それを握りしめ魔王は勇者に近づきます。
「ではその神とやらから力を授かった貴様を殺せば神もこの子供のケンカに付き合ってくれるかもしれぬな」
そもそも勇者は魔王の言う通り人より少し強い程度の人間でしかありませんでした。普通に得意分野…剣の試合でも負ける相手なんて数えられないほどいます。そんな中の上くらいの強さしか持たない普通の人がなぜ勇者となったのか。
そんなことは神様にしか分かりません。
「はっ…一度神様ってのに会えたらなんでこんな死ぬ思いしなきゃなんねぇんだってぶん殴ってやんないとな」
勇者は堂々と迫ってくる魔王から逃げる素振りもなくふらつきながらも真っ直ぐ魔王を見据えます。
「神とやらは天にいると聞いたことがあるな。まぁ今から会わせてやるから殴るなりなんなりすればいい」
魔王と勇者の距離は2mほど。この戦いで最も近づいたと言っても過言じゃありません。
「じゃあな。魔王」
「あぁ貴様の仲間と屠られた我の仲間によろしく頼むぞ」
魔王が大きく振りかぶり勇者の首をはねようとした次の瞬間
「解放…」
勇者が何かボソリと言った直後魔王は謎の衝撃を受け吹き飛んでいきました。
何が起こったか分からない魔王の配下たちは魔王のくらった衝撃の軌道に入っていたせいで一緒に吹き飛んでしまいました。
「宜しくぐらい自分で言っとけ。あの世では俺の仲間と仲良くするんだぞ」
魔王たちが吹き飛んだ衝撃で魔王城の壁は崩壊。今すぐ逃げても魔王の玉座は魔王城の最上階。途中で生き埋めになるのは間違いありませんでした。
「この能力使い勝手悪すぎるんだよ。もしあの世に神様いたらぜってぇぶん殴ってやる」
勇者は座り込み崩れつつある天井を眺めます
砂が落ちてくる中勇者は上を見続けます
「あーでもまぁなんだ」
勇者は頭をポリポリと掻いてフンと笑うと
「勇者様ってのも悪くなかったな」
-こうして魔王と勇者の戦いが終わり、世界には平和が訪れましたとさ。
めでたしめでたし
「とまぁこの世界には誰もが知ってるこんなおとぎ話があるのさ」
少年は笑う
その笑みは深い闇と全く同じくらい黒い
「おとぎ話ははるか昔に終わったものとされる。そんな傾向にある」
少年が被る真っ黒な帽子を夜空へ投げる
少年がいる場所は「空」
足元には電気の灯る家が立ち並びとても幻想的だった
「僕はこのおとぎ話の続きを作りたい。君もそう思わないかい?」
少年は笑う
静寂が支配する夜の街の上空で少年は笑い続けた
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