第5話
庄太郎は祐希も信じられなくなってしまった。一応祐希との関係は続いていた。しかし、前みたいな充実していると思うこともなくなった。
庄太郎が驚いたことは、飢えている状態に戻ることが予想以上に辛かったことであった。満たされていた状態を知ってしまったから余計に空腹を感じてしまう。二人の距離は庄太郎にとっては近かった。しかし心は一人だった。徐々に辛くなっていった。庄太郎は相手の気づかいに気づいた自分を呪いたくなるほど憎かった。
満たされた状態に戻りたい。どうすればいいのかわからないかった。だから、わかりやすく想いを伝えることにした。以前と同じように接してほしいこと、好きだということ。明日、電話で伝えることを決めた。失敗は考えなかった。
予定していた時間が来たので、祐希に電話をした。声が震えて、何を言ったか言われたか、覚えていたのは二割程度だった。
結果から言うと断られた。庄太郎は初めて僕のことを個人として見てくれたことが嬉しくて好きになった。と言ったのは覚えている。それはに対して祐希が、それは恋じゃなく単なる好感でしかないよ。もっと常識的な恋愛観で考えなよ。そう言って祐希は電話を切った。正確に言うと記憶が途絶えた。祐希のその声はきれいな声だった。困惑、失望、そして嫌悪の声であった。その言葉を聞いて聴覚がなくなって、耳に入るのは意味のわからない波のみであった。その間、庄太郎は壁と屋根の境目を必死に探していた。結局、庄太郎にはどちらも同じ壁に見えた。祐希には境目が見えたのだろうか。見えたとしても庄太郎には見えない。誰かに教えられても、わからない。仮にわかったとしてもそれはおそらく祐希の見る境目とは違うだろう。
庄太郎はしばらくして同性からの告白というのはそれほど抵抗があるものなのか、と思った。断られたこと自体はさほどショックではなかった。それより自分の常識を否定されたことのほうが辛かった。
庄太郎は祐希を完全に信じれなくなった。また人形以外信じれなくなった。そして、外との関係を絶ちたいと想い、不登校になった。
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