第4話

 庄太郎にも友達ができた。

 それは文化祭の準備期間のときであった。庄太郎が押し付けられた準備に手間取っているとき、助けてくれたのが彼だった。彼は斉藤祐希といった。祐希も目立つような人物ではなかったが、行動の中にまっすぐな信念を持っているような人物で、真面目であった。それが話していてわかったことであった。準備期間中に祐希とは徐々に仲良くなっていった。それ以降も話すことが多くなり二人で遊びに行くことも多くなっていった。その中で、庄太郎は彼のまっすぐな視線に惹かれるようになっていった。庄太郎は祐希と庄太郎は信頼し合うようになっている様に感じていた。好きになっていた。その時には無意識に女性らしいといわれるような立ち振る舞いをしていた。祐希はとくに気にすることもなく接していた。

 あるとき授業で、人権、特にLGBTQについて学んだ。このとき、ふと引っかかることがあった。

 なぜ人が性癖で差別され問題になっているのだろうか。その人も他人に言えない性癖があるのではないだろうか。なぜ恋愛対象か人に限られているのか。動物、機械、そして人形。差別をなくすための考えなのに、尊重されるものされないものと分けてしまったら、意味がないじゃないか。そもそもなぜLGBTQを全体から分けてしまうのか、なぜ特別扱いするのだろうか、それは平等なのだろうか。その扱いは、絶滅危惧種の動物とあまり変わらないのではないのか。その人を個人として見て理解するだけでは駄目なのか。そんなことがただ頭の中を歩き回っていた。

 庄太郎も祐希を好きになってから自分がバイ・セクシャルだと気づいていた。しかし、庄太郎はそれに加えて人形も愛していた。庄太郎は社会から認知されていないような気がして自分が何者なのかがわからなくなり、不安になり、自分の存在をより疑うようになっていった。

 その日から、祐希の対応が明らかによそよそしくなった、というより気を遣うようになった。どうやら、庄太郎に気を遣っているようだった。相手は善意で行っているのだろうが、それは庄太郎を傷つけた。庄太郎はその行為によって祐希が自分のことをちゃんと見てくれてない様に感じた。確かに彼のそんな真面目なところが好きになったのだが、その真面目さが庄太郎を傷つけた。彼はあの授業から庄太郎ではなく社会や世論を見ているのだろう。次第に祐希も信じられなくなっていった。

 社会的にはこの対応が正しいのかもしれない。だが、それはやはり庄太郎の心に傷つけた。

 

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