第1話③
日差しが鉄製の校舎を暖める。鉄製の校舎は日差しで暖められ、どんどん暑くなっていく。校舎に素手で触ったら火傷してしまいそうだ。
「ねぇ。昨日のあれ見た」
「見た見た。AKIRAマジでかっこよかった」
「この子可愛くね」
「マジだ。めっちゃ可愛いじゃん。何て子」
「さらゆきだって」
学校ではいつもと同じような取るに足らない会話が繰り広げられている。田中はいつも通りに登校して、いつも通り自分の教室に行く。田中が周りをキョロキョロ見渡してみてもやはり芹沢の姿は見つからない。今日も芹沢は来ていなかった。それを確認した田中はいつも通り前にいる拓実たちの会話に入る。
「よお。田中」
「よ、おはよう」
「これ見てみて」
そう言って拓実が見せたのは、とある新聞の記事だった。『高校生殺人逮捕』と大きな見出しで書かれていた。少年Sが同級生の少年Dを殺した罪で逮捕されたという内容の記事だった。写真ではフードをかぶっているが、金色の龍のピアスをはっきりと見ることができた。
「なあ。これって芹沢じゃね」
「このピアス本当じゃん」
「あいつ殺人までしたのか」
「この被害者って2ヶ月前に亡くなった、2つ隣のクラスの堂本だよな。あいつ今年こそ甲子園行くって頑張ってたのにな」
「本当残念だよ。もう亡くなって2ヶ月が経つんだな」
「そうだね」
田中はとても驚いていた。芹沢とは昨日会って話したばかりなのだ。田中には芹沢がこんなことをするやつだとはどうしても思えなかった。昨日あの河川敷で話した芹沢は、どこか追い詰められているように見えたが、絶対こんなことはしていないと思った。
「芹沢じゃねえよ」
「はぁ、どうした田中」
拓実が少しキレ気味で聞いてくる。
「だからその事件の犯人は芹沢じゃねえよ」
言ってしまった。何でいつも通り適当に流すことができなかったんだ。やらかしてしまった。今まで通りの平穏な学校生活は送れないだろう。
田中はそう言った後すぐに荷物を持って、教室を出て行った。
「おう、田中お前どこ行くんだ」
担任の谷口と廊下でばったり会う。谷口は大きな段ボール箱を持っていて、田中を見つけて運がいいというような表情をしている。
「これ、教室まで運んでくれないか?」
「すみません。今日体調悪いんで早退します」
「おぉ、そうか大丈夫か?」
「……まあまあです」
田中は学校を出た。
昨日の河川敷に芹沢がいるような気がしたので、そこへ向かった。近づいていくと人影が見えた。金色のピアスをしている人の影が見えた。
あの事件の犯人が芹沢でないとわかりほっとした。少しは芹沢が犯人ではないかと心の奥底で思っていた。
「芹沢」
「あ、田中だよな」
「よかった。やっぱりお前じゃ無かったんだな」
芹沢は何がと、聞きたそうに田中の方を見る。
「学校で流れてるあの
「ああ」
「俺でよかったら何でお前がそんな扱いを受けているのか教えてくれないか」
「いいよ。昔いじめっ子だったんだ。虐められないようにこんなカッコしているんだ。学校に入りたての頃はみんな自分のことををそれて近づいて来なかった。学校の帰り道女の子が不良に絡まれているのを助けたら、その女の子と仲良くなったんだ。でもその子は村中ってやつの好きな子だったみたいで」
「村中って拓実のことか」
「そいつから恨みをかって有る事無い事色々言われているんだ」
「じゃあ、あの美和だったけその子と付き合ったってのは?」
「それも村中って奴の戦略さ」
「そうだったんだ。ごめんな」
「ありがとう。でもこれでお前も俺と同じはぶられ者だぜ」
「お前を虐めてる連中よりもいいだろ」
「そうだね」
2人は草の上で横になってまま寝てしまった。
芹沢が消えた…… コラボイズ @singetunoyoru
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