親友 前編

「よお、秋山。また同じクラスなんだ」

「昭島君。また一緒だね、よろしくね」


 にっこりと微笑む、親友の秋山。


 高校2年の、クラス替え。

 昨年と同様に後ろの席でほほ笑むのは中学からの腐れ縁。

 秋山は、今回も昭島の後ろの席である。

 名前の順だから仕方がない。


「じゃあ、今日の放課後は再会を祝してカラオケに行こうか?」

「おいおい、2日前に行ったばかりだろう」

「いいじゃん、めでたいんだからさ。カラオケの後はファミレスでパフェを食べようよ」



 なんだかんだ言って、いつも二人でつるんでいる。

 そんな関係を二人は卒業まで続けた。



 二人は、違う大学に進学した。

 とはいえ、ほぼ毎日顔を合わせている。


 昭島が下宿したのをいいことに、秋山は入り浸っていたのだ。


「ねえ、今夜も泊まって行っていい?」

「いいけど、そろそろ親に怒られるんじゃないのか?」

「大丈夫だって。ちゃんと昭島の所に行くって言ってきたし」

「マジかよ・・・」



 大学を卒業し、二人は別々の会社に就職。

 さすがに毎日は会わなくなったが、月に2~3度は飲みに行く仲である。



 しかし、ある日に昭島は秋山の元を訪れた。

 傍らに異性を連れて。


「秋山・・・紹介するよ。俺の交際相手だ」

「へえ・・・いつの間につきあっていたの?」

「それでな・・・今度結婚することになったんだ」


 秋山は茫然とした顔をしてしばらく無言だった。

 だが、昔のようににっこりと微笑む。


「びっくりしたよ。おめでとう。祝福するよ」

「ありがとう。・・・秋山にそう言ってもらえるとうれしいよ」



 昭島の結婚式。

 友人代表で、秋山は晴れやかな笑顔で祝辞を述べてくれた。


 結婚後、さすがに前ほどは会わなくなったが年に2~3度は飲みに行く仲である。

 



 そして月日がながれ、35年がたった。

 二人は、65歳。


 昭島は伴侶に先立たれ、独り身になった。

 残念ながら子供に恵まれなかったため、天涯孤独の身となった。


 だが、それは秋山も同じこと。

 結局は秋山は結婚することもなく、生涯独身であった。



 やがて、二人は一緒に住むことになった。

 年金が厳しく節約するという理由だったが・・・まぁこじつけではある。

 一人で住むのが寂しかったのだ。


 二人の生活はそれなりに楽しかった。

 中学からこの年までの腐れ縁。

 気心が知れた関係。


 昭島は、秋山との生活がとても気に入った。

 でも、昔から気になっていたことがあった。



「なぁ。なんでお前は結婚しなかったんだ?」

「いいじゃない。いい相手がいなかっただけだよ」

「ふうん・・・」


 秋山の答えはいつも一緒だった。

 でも、いまだかつて交際したという話を聞いたことが無い。

 不思議であった。


 親友の昔と変わらぬ笑顔。

 この笑顔は変わらない。


 まぁ、いい。

 この生活は、老後になっても楽しい。

 昭島にとって、親友は何事にも代えられないものである。

 いつまでもこの生活が続けばいいと思っていた。



◇◇◇◇◇◇



 作者からのクイズです。


 昭島と秋山の、それぞれの性別は何でしょうか?


①昭島が男性で、秋山が女性

②昭島が女性で、秋山が男性

③両方男性

④両方女性


答えは後編で。

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