第20話 河原の対決


無声映画風、実験小説


―――――――――――――――――――――*



 夕暮れ時の河原に立つ、二人の男。


 一方はボロボロの学ランを纏った、岩山のような大男。

 そしてもう一方は、純白の特攻服に身を包んだ、小柄な男だ。


 二人は間近に向かい合い、夕日に照らされた互いの顔を無言で睨み付けていた。


 この対決を見届ける者はない。

 ただ風に吹かれた枯草だけが、男達を煽るかのようにザワザワと耳障りな声援を送っていた。


 学ランの男が、ズイと一歩踏み出す。

 特攻服よりも頭一つ大きいその男は、その口元に余裕ともとれる笑みを浮かべていた。


 特攻服はたじろぐように半歩下がる。

 だが次の瞬間には、その足をギリッと踏み締め、再び学ランに向き合っていた。


 拳を固く握り、奥歯を噛みしめ、顎を突き出すようにして。

 間近に迫る大男の顔を睨みつける。

 それは男の意地か、それとも引くわけにはいかない理由があるのか。


 その時、学ランの両眼がカッと見開かれ、鋭い光を放った。


 特攻服は目を逸らさない。だがその顔は真っ赤に紅潮し、目には涙さえ浮かべている。


 やがて特攻服は、観念したように目を瞑った。


 それを見た学ランの表情が、フッと緩む。


 そしてゆっくり顔を近づけると、やさしく唇を重ねたのだった。


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