第7話 ○○の恩返し

警告!

エロいです!


―――――――――――――――――――――*



コンコン……。


夜分に失礼いたします、Yさまのお宅はこちらで……。ああ良かった、Yさまお会いしとうございました。


若い娘がこんな時間に、山奥の一人暮らしの男の家に何の用事かと? ええと……、その。


いえいえ、怪しい者では決してございません。


実はハイ、山道で迷ってしまいまして。勝手なお願いですが一夜のお宿をお貸しいただけないかと。


え? さっきYさまの家と言って訪ねてきた? 全然迷ってないだろうって? えええーと、それは。


あの……。雨も降ってまいりましたし、中へ入れていただくわけには。


怪しさ満載ですか、そうですか。だけどまあいいかと。ありがとうございます、本当にYさまはお優しい。


では失礼いたします。


あ、タオルまでお貸しいただいて。綺麗な着物が濡れてしまうって、若草色がよく似合ですだなんて、まあ御上手。


Yさまこそとっても逞しいお体で、ほんと惚れ惚れしてしま。あ、ハイ。何の用件かとお聞きですか。


はい実は。


わたくし、昼間Yさまにお命を助けていただいた虫けらにございます。


ごめんなさい、いきなりこんなことを申し上げてさぞかし驚かれ……。あれ? あまり驚かれていませんね。


長い人生、たまにはこんなこともあるだろう、って。元が昆虫だろうが何だろうが綺麗な女性なら全然OKですかそうですか。


というか、Yさま酔っぱらっておられます? 夕方からもう2升もお飲み?


つまみは鹿肉と畑でとれたナスとキュウリの炒め物を、ご自分で。それはよろしゅうございますね。


はいはい、用件でございますね。


実はわたくし、強いオスを求めて旅をしておりまして。でもなかなかタイプの男に巡り合えず、そんな時にYさまに助けていただいて。


はい、一目惚れでございます。


わかっております。人間様と虫けらでは身分が違いすぎます、身の程知らずは重々承知。


でもどうしても諦めきれず、山の神様にお祈りしたところ特別にお許しをいただきまして。こうして人の姿となって訪ね参った次第にございます。


妻にしてくれなどとは申しません。


なれど、どうかこの小さき想いをお汲みいただき、せめて一夜のお情けを。わたくしにY様のお子をお授け……て、あれ! Yさまそんないきなり!


あっ、はずかしい。わたくし実は今夜が初めてで……、ああっ余計にいきり立って!


ああんっ! Yさますごい! すごい!


えっ? ところで君は何の化身なんだいって? 緑色の衣装ってことは畑の青虫かいって? あっ! あっ!


い、いいえ。わたくしはあんなムチムチで柔らかい体では……。


えっ、僕は君のようなスリムな子が大好きだよって? あっ! あっ! そんな激しくっ!


じゃあ庭にいたキリギリスかいって?


いいえ、わたくしはあんなきれいな声で歌うことなど。


ええっ、今の君の声が最高だよって! ああんっ! ああんっ!


そろそろ正解を教えてくれって?


ええ実は。わたくしは、昼間オニグモの巣にかかって難儀していたところを助けていただいた、カマキリでございます。


この恩義は一生あんっ! あんっ! Yさまっ! Yさまっ!


好き! 大好き! 食べてしまいたいっ!!


もう我慢できないーっ!!!

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