第18話4-2:投稿
「み、宮本君、私と一緒に色々な小説を読みませんか?」
私の内心は咲に思い切りエールを送っていた。
咲は小柄で色白、運動は苦手だけど文学少女を地で行っているような可愛らしい子だ。
友人として応援しない訳には行かない。
「あ、えっと、その‥‥‥」
宮本君はそう言って私をチラ見する。
うんうん、私が邪魔か?
しかしここは男の子らしくビシッと咲の事を受け止めてあげないと!!
「‥‥‥だめ、ですか?」
「あ、いや、その、僕なんかその‥‥‥」
おいおい、ここまで来てそれは無いぞ宮本君!
咲だって期待に瞳をウルウルしているじゃ無いの!
にこにこしている私に宮本君は大きなため息をついて咲に向き直る。
おっ!
いよいよか!?
「え、えーと、坂田さん。申し出はうれしいのだけど僕ってそれほど小説読まないよ? それにどちらかと言うと‥‥‥」
「い、いえ! 一緒に面白そうな小説読むだけで、その、無理なら‥‥‥」
‥‥‥えーと?
まさか宮本君咲の事ふるつもり!?
そんな事っ!!
「みやも‥‥‥」
「‥‥‥僕ね、憧れている女性がいるんだ。その女性を勝手に物語の中で動かして勝手にこうなったらいいなって妄想して‥‥‥ でもその人は全然気づいてくれないし、名前すら覚えてもらえなかった。元気なその人を見ているだけで良かったはずなのに、もう物語の中でその人をこれ以上勝手に動かす事が怖くなったんだ!!」
私が宮本君の名前を呼ぼうとしたらいきなり喋り出した。
そして私を見て涙目になっている。
「‥‥‥うれしかった、話があるって聞いて。でもまさか他の子と僕の仲を持つためだったなんて!」
そう言って宮本君は走り出した。
「えっ!? ええぇっ!?」
言葉の意味が分からず私は混乱する。
そして泣き出す咲。
宮本君はどっか行っちゃうし、咲は泣きだすし、言われた言葉の意味は分からずで私はその場で大混乱をするのだった。
* * * * *
あの後私は電車でさっきの事を考える。
咲は泣きながらも笑って私に言った。
「宮本君、真菜の事好きだったんだよ。真菜、みやむーさんの近況ノート読んでみてね。私は大丈夫‥‥‥だか‥‥‥ら」
そう言って咲も走って行ってしまった。
結局二人を追う事が出来なかった私はしばしそこで呆然としていた。
「なんでみやむーさんが関係するのよ?」
ぼやきながらスマホの画面を開く。
近況ノートの更新がされている通知が有るのでみやむーさんの近況ノートを開く。
「えっ!?」
短いコメントの下に載っていた写真は真っ赤な夕焼けの下に映るうちの学校だった。
慌てて書かれたコメントを見る。
『先ほど良い事が有りました。この夕日の中で物語の先が動き出せそうです。そして自分も』
そう書かれていた。
本当に短いその投稿された近況ノートを見て私はしばし呆然とするのだった。
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