第三章 止まる物語

第10話3-1:突然の停止


 「あれ?」



 いつもの駅のいつものプラットホームで私はいつものWeb小説の更新を確認して動きが止まる。


 毎朝六時には更新をされていたこの物語が今日は更新されていなかった。


 ちょっとがっかりしながらも、こう言う日もあるよね? と自分に言い聞かせコメント欄を見てみる。

 私が昨夜書いたコメントが一番最後に書かれたままだった。



 「う~ん、残念。こっちもそのままかぁ。みやむーさん何か有ったのかな?」



 そんなつぶやきを残して私は電車に乗る。

 そしていつもの風景を見ながら学校へと向かう。


 目的の駅に着き、ちょっと重い足取りで学校へ向かう。

 何故か今日は周りを歩いている他の生徒たちより私の方が歩く速度が遅い。



 「更新されていないだけでこんなにテンション下がるモノなのだなぁ~」



 とぼとぼと歩きながらぼやいて私は頬を自分で叩く。



 ぴしゃん!



 「良し、気分を変えて学校学校! きっと明日にはまた更新してもらえるよね?」


 そう自分に言い聞かせながら坂を上って行く。



 * * *



 「おはよう真菜~、今日って更新されて無いね~?」


 「ああ、七海おはよう~。そうなんだよね、何か有ったかな?」



 教室で時間を持て余していると七海がやって来た。

 そして挨拶をしながらあのWeb小説が更新されていない事を言って来る。



 「おはよう、真菜、七海。そうそう、あの小説更新されていないね?」


 「あ、おはよう咲。そうなんだよね~、こんなの初めてだよ」


 「おはよう。どうしたの?」


 「ん、優子おはよう~。いや実はね‥‥‥」


 七海たちの説明に優子は変な顔して自分のスマホを開く。



 「本当だ。まあ作者にもいろいろ有るからそのうち更新をするのじゃない?」


 「優子が何となく優しい?」


 「何それ? 私はいたって優しいわよ!」


 更新をしていないから何か言って来るかと思ったら意外な一言。

 思わず本音を言ってしまった私に優子は突っ込みを入れてくる。


 「毎日更新ってのは凄いと私も思うよ? でも無理して話が止まるくらいなら定期的なモノにでもしてもらった方が良いと思うわ。この作者も無理しないで最後まで物語を書いてもらいたいわね」


 「やっぱり優子が優しい‥‥‥」


 「なによそれ! 私だって面白いと思った小説はちゃんと評価するわよ、Web小説だってね‥‥‥」


 「あれ?」


 優子はそう言いながら口をとがらせそっぽを向く。

 でもそれって‥‥‥



 「あのWeb小説読んだの?」



 「わ、悪い?」


 「んーんっ! 断然おすすめだよ!」



 思わず立ち上がり優子の手を取ってしまう私。 

 更新はされていないけどここに新たな同志が誕生した!


 どう言う訳か私はそんな事だけでやたらとテンションが上がって来るのだった。


 

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