第7話2-3:友人


 友人の咲を含め私は最近はまっているWeb小説について話を始める。

 咲はその話を興味深く聞いているけど七海はあきれた様子だった。

 


 「へぇ、Web小説かぁ。素人の人が書いているから気にもしていなかったけど、そんなに良い物語も有るんだ?」


 「そうなの! これ今私が一番はまっているやつ!」



 私はそう言いながらスマホに表示する。

 咲はそれを見てすぐに自分の机に戻りカバンからスマホを取り出した。



 「なに咲、興味あるの?」

 

 「百聞は一見に如かずって言うでしょ? 真菜がそれほどはまっているってのなら読んでみようかなって。でないと真菜のお悩みに相談も出来ないし~」


 言いながらSNSでサイトを教えてくれるように咲は言って来る。

 私はすぐにそのサイトをSNSで教え、そのサイトを使うために登録をしてもらう。



 待つ事しばし、咲の登録が終わる。



 「これでWeb小説が読み放題かぁ。真菜よ、おぬしも悪よのぉ~」


 「何言ってるのよ、別に悪いことしている訳じゃないんだから良いじゃない? それにここはプロの作家さんの小説も読めるらしいよ? 私はまだ読んだことないけど書籍化される前のもあるらしいよ?」


 「へぇ、それは知らなかった!」



 今の時代書籍化されないでWeb上で発表される物も多い。

 私も最近はテレビなんかあまり見ないで投稿動画サイトの動画ばかり見ている。

 友達との連絡もSNSで出来てしまうし、ゲームも無料アプリで楽しめてしまう。

 学生なので課金はちょっときついけど、そこそこ楽しめているので本当に助かっている。



 「ふぅ~ん、出だしはまあまあね。確かに素人の人が書いているとは思えないね。これは良い事を教わった!」


 咲は既にあの小説を数話読み終わっている様だった。

 咲の読書スピードは速い。


 なんであんなに早く読めるのか不思議に思う事もある。



 「どうも私はこう言うの苦手だな。文字ばかりってのも。でもまあ、このWeb小説ってのは読みやすいかな? 一話一話も短いし、本と違って隙間が多いから読みやすいわ」


 なんだかんだ言って七海も登録を済ませて私がはまっているWeb小説を読み始めている。


 七海の言う通りこの小説は絶妙な間を取ってすごく読みやすい。


 あまりにも文字がぎっしりとなっていると何かの合間に読むには手間がかかるし、電車の様に揺られる場所ではあまりにも文字がぎっしりと埋まっていると読んでいる行を間違えてしまってストレスになる事が有る。


 そう言った意味ではWeb小説は無駄に隙間を作っても紙と違って余剰に余裕があるからこの手法は結構いろいろな所で使っているらしい。

 それに時たま顔文字を割り込ませ思わず笑いを誘う場面もある。



 「Web小説なんて漫画よりひどいと思うけど?」


 私が教えたWeb小説を読み始めていると、そう声を掛けられる。

 声の主を見れば友人の高橋優子その人だった。



 「優子? なに、優子ってWeb小説嫌いなの?」


 「嫌いと言うかなんと言うか、私も前に興味があったから少し読んでみたけど、素人作文と言うか、誤字は酷いし文法もなっていないしで読んでいてイライラしてきたわ」



 優子はそう言いながら手を出す。

 どう言うつもりか分からず私は優子に聞いてみる。


 

 「えっと、何?」


 「ちょっとそれ貸して。真菜のおススメって言うWeb小説を見てみたいのよ」



 言われて何となく上から目線が気になったけど、面白い物語を素人の人が書けないって訳ではない。

 ちょっとムッとしながら私は第一話を表示して優子に渡す。

 

 優子はそれを受け取り読み始める。

 そして一話読み終わる頃にスマホを私に返して言う。



 「まあ、前よりはWeb小説も少しは良くなっているみたいだけど、やっぱり素人作品よね? 横書きも読みにくいし、何より区切りが短すぎる。しっかりと読書した気分になれないわ」


 「そう? 片手間に読める分には良いと思うけど?」


 優子のその説に思わず咲も反論をする。

 私も頷くけど、優子はやはり否定的だった。



 「どう言うつもりで小説を書いているかは知らないけど、そこまで書き連ねるのならどこかに応募してちゃんとした本にした方が良いと思うけど。Web小説なんて最後まで書かないで終わる人の方が多いんじゃない?」


 「そ、それはそうかもしれないけど!」



 Web小説だって本来は書籍化を目指してますって人が多いと言うのは知っていた。

 確かに発表するからにはその最後まで読んでみたいと思う。

 でもだからと言って「楽しい」と思うWeb小説を頭から否定されるのは気分が良くない。



 「でも好きなんだから良いじゃない!」


 「否定はしないわよ。人にはそれぞれの好みが有るもの。ただ、書かれたWeb小説はどんな評価を受けても書籍化された物とは違い無責任すぎるのが嫌いなの」



 少し語気を荒くした優子は視線を外す。

 一体どう言うつもり?



 「まぁまぁ、優子もそれくらいにしなよ。真菜、私もWeb小説を敬遠していたのはね、せっかく良い小説が見つかってもなかなか更新してくれない物語が多いって聞いたからなの。こうした本の小説って次を発行してくれなきゃ作者も商売にならないし、きちんと責任をもって発行しているから読んでいて安心感があるしね」


 咲はそう言いながら今まで読んでいた小説の本を取り上げる。

 それは誰がどう見ても出来上がった小説の本。


 と七海がここで私の考えを断ち切った。



 「で、話がそれたけど真菜の気になっているこの小説とうちの学校の類似点についてはどうなった?」



 「「あっ!」」



 優子のせいで最初の目的を忘れていた。

 もともとは私の悩みもそれだったのに!



 「なに? どう言う事?」


 優子は七海に顔を向けて聞く。

 七海はニヤリと笑い事の顛末を話し始めたのだった。   

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