第二章 投影

第5話2-1:共通点


 私は今日の分が更新されたWeb小説を読み終わりスマホの画面から顔を上げる。



 「そう言えばうちの高校にも高台のテニスコートあったっけ?」



 物語の中の高校には主人公が思いを寄せる彼女さんがテニス部でそこへ主人公は良く行くのだが、どうにもこうにもうちの高校とよく似ている。

 とは言え、たまたま似ている設定だったのでその時私は深くは考えていなかった。



 * * * * *



 「あれ?」



 「どうしたの真菜?」


 教室の掃除をしながらふと窓の外を見ると遠く街の方に煙突が見える。

 緩やかに風が吹いているのだろうか、立ち上る煙は緩やかに流されていた。


 「あんなところに煙突が‥‥‥」


 「はぁ? 真菜、あんた大丈夫?」


 うちの高校は丘の上にある為に教室からも遠くの街が一望できる。

 そしてその風景はあの小説とよく似ている。



 ―― 窓辺の席で退屈な授業に飽き飽きして遠くの街を見る。小高い丘の上の学校だから遠く煙突から煙の流れも良く見えた。 と、僕は校庭にいる彼女に気付く‥‥‥ ――



 あの小説の一節を思い出す。


 今見ている風景と小説の内容が合致してしまい、思わず校庭を見て彼女を探してしまう。

 勿論そんな者はいない。

 広い校庭は掃除をする生徒がちらほらといるだけだ。



 「真菜、どうしたのよ?」


 「‥‥‥うん、なんでもない。うちの高校って丘の上に有るんだなって」


 私がそうつぶやくと七海は変な顔をして私の顔を覗き込む。


 「あんた、熱でもあるの?」


 私のおでこに七海は手を差し伸べる。

 そしてますます変な顔になる。


 「熱がある訳でも無いし、どうしたのよ?」


 「ああ、ええぇと‥‥‥ やっぱり何でもない」


 私はそう言って教室の掃除を始める。

 七海は両手を上げ肩をすくめるけどそのまま掃除を再開する。




 私はもう一度ちらっと窓の外を見る。

 そして、たまたまだと自分に言い聞かせるのだった。 


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