第3話1-3:微笑
「ねえ真菜って最近何か良い事でもあったの?」
学校に着いて教室に入り、みんなに挨拶しながら席に座ると親友の夏目七海が挨拶をしながらそう言って来た。
「なんで?」
「いや、真菜って朝からニヤニヤしているからね」
言われて初めて自分がニヤついている事に気付く。
特に何が有った訳ではないけど今朝の更新分を読んでから「近況ノート」であの真赤な夕焼け空の写真を見て勝手に物語の続きを想像して思わずにやけてしまっていた。
「うん、何でも無いんだけどね」
「なんか怪しいな‥‥‥ まさか彼氏できたとか!?」
「ないない。この十六年間寂しい私にはまだ春が来ていない!」
私がそう言うと二人して顔を見合わせ同時にため息をつく。
そしてどちらともなく乾いた笑いをする。
先ほどの小説の世界から現実に引き戻される。
そしてまたいつもの授業が始まる。
あの小説のようにステキな恋愛やその思いの行き違い何て話が現実の世界にそうそうある訳もない。
高校生になって意気込んでみたものの毎日をこなす事だけで結構いっぱい、いっぱいだった。
同じ中学から一緒だった七海だって同じ。
だから私はますますあの小説の続きが楽しみになる。
「あんな風に恋してみたいな‥‥‥」
口にしてはっと気づく。
なんなんだこの夢見る乙女の様な私は!?
現実世界にあんなモノは無い。
無いったら無い。
そんな事を落胆して今日も学校が終わる。
部活には入っていないから大人しく帰ろうかと思ったら七海に付き合わされて片づけを手伝わされた。
思った以上に時間がかかり気付けば陽もだいぶ傾いていた。
「はぁ、やっと終わった」
「ごめんごめん、帰りにおごるから~。でも真菜が手伝ってくれたおかげで助すかった~」
笑いながら駅にまで歩いて行く。
ふと空を見ると夕焼け色に変わり始めていた。
そしてその赤くなり始めた空に私は思い出す。
「続き、楽しみだな‥‥‥」
「ん? なんか言った?」
「なんでもない!」
そう言いながら私たちは駅までの道のりを急ぐのだった。
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