第9話

 気がつくと、白い砂は、周囲から消えた。光の届かない洞窟のような場所へ、いつの間にか移動したようだ。


「そんなに大きな奇跡が必要なのかい?」


 突然頭の上から、声が降ってきた。


 見上げると、大きな岩の上に、おばあさんが3人いて、僕を見下ろしていた。


「僕は、親孝行をしたいと思っていまが、現実世界での肉体は、死にかけています」


「なるほど」


 僕の話におばあさんたちは、頷いた。


「僕が、先に逝くとお母さんも父さんもとっても悲しむので、せめて生きていたいのですが、僕の病気は、末期癌らしくて、蘇るには、大きな奇跡が必要です」


「なるほど。確かに大きな奇跡がいるね。私たちが、持ってる輝石なら、あんたを蘇らせる事も出来るね」


 おばあさんが、とても大きな輝石を僕に見せました。もうひとりのおばあさんが、言いました。


「でもね、ただでは、あげることは出来ないよ」


 このおばあさんたちは、全員が座り込んだまま立ち上がらない。

 おばあさん達のいるところは、何故かボンヤリ光っている。


「私たちは、ご覧の通り足が悪いのさ。その昔、イタズラが過ぎてね。私たちが使っていた杖を龍に取り上げられてね。それからはこの岩の上から、動けなくなったのさ。なーに、そんなに難しいことは、言わないよ。あんたが、新しい杖を作ってくれたら、すぐにでもこの輝石を渡すよ」



 龍?あの列車を曳く龍の事だろうか?


「僕は、杖なんて作った経験は、ないです。おばあさん達の杖のことは、聞いた事がありませんが、龍なら知り合いがいるので聞いてみることは出来ます」


「そうかい、すまないね。しかし、あんたの知り合いの龍が、私達の杖を取り上げた龍かい?そうでなければ、現実世界のあんたの時間が無くなるよ。死んじゃったらさすがに、生き返る事は、無理だからね」


「しかし、先ほども言いました通り、僕は、杖を作った経験がありません」


 おばあさん達は、ニヤッと笑った気がした。


「なーに、大丈夫さ。あんたの勇気を少しだけ貰ったら、後は、私達で杖に変えるよ」


「勇気って、あの勇気ですか?」


 





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