第6話

 龍が、列車の車輪をおろしたのは、街中に何故か荒野が点在するおかしな世界だった。


「はい、着きましたで。おっと、これを忘れてはいけません」


 死神は、僕の腰にベルトを巻いた。


 そのベルトは、2、3年前におじさんが、くれたものだ。


 僕にアマアマなおじさんは、僕が、欲しいと言う物を何でも買ってくるので、よく母さんから怒られていた。


「これは、テレビで人気のヒーローの変身ベルト」


「今度は、きっとオモロイで」


 そんな言葉を残して、龍の列車は、走り去った。


 荒野にひとり残された、僕の前に怪人が現れた。問答無用で、襲いかかってくる怪人をかわし、テレビで見たように、ベルトを回す。


 見たことのあるヒーローに変身した僕は、怪人と戦った。


 最後は、キックを放つと、怪人は、本当に爆発して、僕はビビった。


 変身を解き、いつの間にかそばにあったバイクに乗り、街に入った。


 それからは、忙しい日々が待っていた。


 どこの街に入っても同じ顔をした、世話係がいて、食事や寝る場所の面倒を見てくれてる。


 しかし、朝目覚めると、何故か事件に巻き込まれ、その裏には、必ず怪人がからんでいる。


 面白かったのは、最初の2回目までだ。

 

 この世界は、とても疲れる。


 3体目の怪人にキックを放った後には、現実世界の両親の涙を何度も思い出した。


 僕は、こんな世界にいたいわけでは、ないと分かってきた。

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