第5話
「お気に召しませんでしたか?まあそうでっしゃろな。何もかも思い通りって、少しも面白味が、おまへん。」
死神の上品な顔が、下品に笑うところは、あまり見られた物ではなかった。
「せやけど、あんさんが、こちらにいてる間に、私も勉強してきました。2年前にあんさんが、夢見ていたことを次の世界では実現しましょう」
なんだろう?と思いながら、列車に揺られて睡魔に襲われた僕は、寝てしまった。
次に目を開いた時、僕はベッドの上で、いろいろなチューブと共に寝ていた。
そうか、現実世界に戻ってきたか。
そう言えば死神が、言ってたな。
「現実世界に、こちらの世界の記憶が持ち込めるようになると、いよいよですな。急いで魂の休息世界を探さなあきまへん。そうなったら、この死神にも教えてもらえまっか」
関西弁には、そぐわない端整な顔立ちを思いだすと何故かムカつく。
口を開いてみる。
「心配しないで」
まだ、話せるようだ。
「僕が死んでも、楽しい世界を一生懸命用意してくれている死神がいるから、心配しないで」
しかし、この言葉は伝わらなかった。
向こう側の世界の事は、伝わらないのだろう。
涙をためた目で、母さんは、僕を覗き込んでいる。
父さんは、窓の外を見上げている。
それだけの事で、とても疲れた僕は、目を開けていられなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます