第4話

 僕の自由になる世界。


 第一の世界は、僕が普段不満を持っていることが、削除された世界だった。


 世界は、現世で、死にかけている僕がいる世界とほとんど変わりなかった。


 両親共に同じで、毎回食事は、僕の好物がテーブルに乗っていた。


 ゲームを夜遅くまでしていても、小言を言われる事もない。


 学校が、存在しない事が、嬉しかった。


「では、ここでの生活を1週間ほど、お楽しみください。気に入れば、死後あなたをこちらにご案内します」


「いや、1週間も留守をすると、親が心配するよ。だいいち、僕の寿命って1週間も残っているの?」


「大丈夫です。こちらで1週間でも現世では、一晩になるよう時間を調整してます」


 死神と龍の列車は去っていった。


 夕食後、ゲームを始めると、気が付けば明るくなり始めていた。


 少し目と身体を休めるため、街を散歩でもしようと屋外に出た。


 そう言えば外に出るのも久々どころか、本当の僕は、自力で歩けなくなってベッドから出られないなと考えると、可笑しくなった。


 家に戻って、母さんの作ったハンバーグを食べて部屋に戻ると、ポテトチップスを食べながらコーラを飲む。


 ゲームを始めると、2時間くらいで、眠くなり、寝てしまう。


 翌日からは、ゲームをしなくなり、家の周囲をやたら歩き回った。


 健康なときは、何とも思わなかったが、ゲームよりも歩ける事の方が嬉しい。


 家の周囲には、小川がある。


 有名神社の御神体の山を源流に持つこの小川は、人里を幾ばくか通り抜け、その聖なる水に少しのけがれを持ち始めている。


 しかし、それが良いのだろう。


  鯉が、楽しそうに、巨体を揺らしている。


 桜が少しずつ、流れに身を投げていく。


 生まれてから、ずっとあったはずの光景なのに、ゲームの画面より、楽しい。

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