第3話
龍は、器用に列車を鉄路に降ろすと、駅にゆっくりと滑り込んで来た。
「死神、今日の客は、一人だけか?」
僕達は、ホームにいるが、それでも龍の目線は、見下ろしていた。
「そうか、またややこしい案件を抱え込んだようだな。思春期入り口とは」
龍は、気の毒そうに僕達を見下ろしていた。どうやらこの恐ろしげな姿に反して、この龍は、優しいらしい。
龍が、曳く列車は、死神と僕の二人しか乗っていなかった。
元々人を乗せて、死後の世界に案内するのは、翼を持つ馬であるペガサスの役目だったらしい。
世界大戦で一時にたくさんの人が亡くなり、ペガサスの曳く馬車では、間に合わなくなったので、この龍の列車に代わったそうだ。
現世で、人間と馬は仲が良い様に、この世界でも、ペガサスと人は仲が良く、ずいぶん長い間人を運んでいたらしいが、戦争の大量死を目の前にして、ペガサスは、すっかり鬱になったらしい。
「あのお馬さんは、今でも鬱から、抜け出せないでいますねん。人間の事が、大好きだっただけに、あんなに大量の死体を見るのには、耐えられなかったようです」
死神は、ペガサスの事が、心配らしい。
「仲が良かったのですか?心配ですね」
「まさか。これでも死神ですねん。他人の心配なんかしたことおまへん」
嘘だ。
心配しているとしか思えない。
どうやら、死神も自身のイメージを護るため嘘をつくらしい。
「着いたよ」
龍の声が聞こえた。
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