第2話

 どちらにせよこの人生は、終わりらしい。

 

 この死神に、次の世界をより良いものになるよう、世話になるしかないようだ。


「で、僕が死んだ後は、ここに来るの?」


 悪くない世界だ。今、僕が離れて行く世界に似ている。


 道路があるのにクルマが、1台も走っていないことと、鉄路はあるのに列車が走っていないことが違うが、おそらく死んだ後は、空を飛べるのだろう。


 悪くない。


 たぶん…。


「ここは、入り口ですな。今からあんさんがもっとも癒される世界を、わたしと一緒に探しに行く事になります。あんたの人生経験が少ないので、えらいことになりそうやけど」


「何故?」


「思春期というやつがありますな。あれが、キーポイントなんですわ。あれを無事抜けた人は、愛というものが、どんなに大切か分かるようなりますねん。そこで、たいてい、運命の赤い糸を欲しがる」


「赤い糸?」


「つまり、次の人生で、結ばれる相手にあらかじめこの世界で出会い、来世での運命的な出会いと、熱い恋。そして、愛に満ちた生活を手に入れたいと思うようになりますねん」


「そんなもんですかね」


「あんさんには、まだピンとこないでしょうね。確かに、運命の相手を欲しがる人達が言っていることは正しくて、たいてい熱い恋までは、かないますねんけど、その後は離婚される方も若干ございます。結局、現実と恋は、多くの部分で、両立しないんでしょうね。死ぬまで添いとげたかったら、自分たちの努力次第ですな」


 黒メガネの死神は、口元だけで、笑った。

 黒メガネを外せば、二枚目なのだろう。白い肌に綺麗に剃られたヒゲのあとが青い。


「しかし、あんさんの人生は短すぎて、熱い恋と言われてもという感じでっしゃろ」


 まあ、確かにね。

 しかし、別にね。


 確かに恋愛は、良いもので、大切なものなのだろう。


 しかし、僕には、経験がなく分からない。


 別のものを求めるしかないだろう。


「来ましたよ」


 死神が、空を指差し、言った。


 指差す方向には、列車が現れた。

 

「空を飛ぶ列車か」


 しかし、驚いたことに、列車を曳いているは、黄金の龍だった。

 

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