龍の列車と奇跡の石
@ramia294
第1話
ゴーゴーと空を切り裂く音が聞こえる。
空を見上げると、龍が飛んでいる。
この世界では、列車を曳くのは、龍の役目だ。鉄路に列車の車輪が、音もなく触れる。
ほとんどの人が、接路したことに気付かない。
僕の旅は、続く。
また、あの夢の中にいる。
夢の世界は、現実に、僕の生きる世界とほとんど変わらない。
人の姿は、僕の世界と比べて少ないが、死後の世界は、その人の自由選択だからだろう。
僕に、膵臓ガンが見つかったのは、つい三ヶ月前だ。しかし、既に身体には、たくさんのチューブが、取り付けられて、両親も僕の姿を見て泣き疲れて口数が、減った。
「先生、助けてやってください。この子は、まだ十二歳です。人生は、これからなんです」
最初、そう言っていた両親も最近では、
「この子が、出来るだけ苦しまない様にお願いします」
と、変わってきた。
そりゃそうだろう。若い膵臓ガン患者なんて看る側も困るだろう。
というわけで僕は、近々死ぬようだ。
僕のような立場の人間は、夢の中で、死後に僕が行き着く世界の下見をする事が出来る。
もちろん起きた時には、覚えていないが、前回も同じ夢を見たことは、覚えている。
それにしても生きている世界とほとんど変わらない世界に行く事になるなら、死ぬ事の意味があまりないなと考えてしまう。
「それは入り口やからね」
突然、男の人に、話かけられた。
180センチは、超えていそうな長身と黒いサングラスは、まるで仮想世界を扱った映画に出て来たハリウッドスターのようだった。
しかし、どうみてもな白人にしか見えないその男が話す言葉は、何処かの方言が、混じった日本語だった。
「死後の世界は、魂の癒しの時間やから、あんさんが、ほんま楽しいと感じる世界に、この死神、責任持って、あんじょう案内さしてもらいます」
「あなたは、誰ですか?」
「わたくし、死神をやらしてもらってます。あんさんたちが思うイメージの存在とは、ちょっと違うかもしれませんが、より良い死後の世界に案内させてもらう事が仕事ですねん」
どうやらあの抗がん剤の苦しい治療は、何の役にもたたなかったらしい。
「効いていましたよ。それよりもガンの勢いが、大きかっただけすな。もし、あんたのガンを全て滅ぼす効果のある薬なら、命を先に落としますやろね。あんたのガンは、そういうたちです」
分かってはいたが…。
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