11話 幼馴染みとお泊まり会〈前編〉
一日経過し、月曜日になった。
3日ぶりの学校は少し面倒な所もあるが、ゴールデンウィーク明けに比べればマシだった。
ちなみに、言うまでもないが俺はどの部活にも所属しない帰宅部だ。
だから、休日に学校に行くこともないので、余計にダルく感じる。
「おはよ、千尋」
「あぁ、おはよう夢」
そんな風にグダグダと歩いていると、珍しく夢が駅の前で待っていた。
「夢が先に来るなんて珍しいな」
「千尋が遅かったんでしょ」
そう言って、呆れる夢。
俺はスマホで時間を確認すると、確かにいつもより少し遅かった。
「そうみたいだな」
「はぁ…」
俺は何故だか分からないが溜息をつかれた。
まぁ、そんなことに反論するほどの気力はない。
なんせ、すでに昨日のアキバで体力をほとんど使い果たしているからだ。
「まぁいいわ。そろそろ行くわよ」
「りょうかい」
俺はそう返事をすると、先行する夢にのそのそと着いて行った。
昼休みになった。が、特に変な噂はなかった。
なんせ、昨日は俺と椎名の二人で出かけたのだ。
誰かに見られていて、それが良くない方向に向かっている可能性はある。
一応椎名のクラスも見に行ったが、特に何もなかった。
「ふー」
俺は深くため息をつくと、少しリラックスした。
ほんと、どうして俺がこんな目に遭わなければいけないのだろうか。つくづく運命とやらがにくく思えた。
「どうしたんだ?そんな暗い顔して」
「いや、ちょっと世の不条理について考えていただけだよ」
「いや逆に気になるんだけど…」
俺がそんな風に考え事をしていたら、いつも通り裕翔が話しかけてきた。
いつもどちらが誘うでもなく、自然と二人でいることが多い俺たちだが、どうしてなのか未だによくわかっていない。
「で?最近は噂も落ち着いてきたし、少しは楽になったんじゃないか?」
「馬鹿言え、視線はいつでも嫉妬の眼差しだよ」
「それは石永さんだけのせいではないと思うけどな…」
「分からなくもない…」
そんな風に、主に美少女四天王の顔をお互いに思い浮かべていると、教室の外がやけに騒がしくなっていた。
俺がどうしたのかと視線を向けると、そこにはよく見覚えのある少女が立っていて、思いっきり俺を見ていた。
そして、視線が合うと少し嬉しそうな顔をして、手招きをしてきた。
「千尋、お呼びだぞ」
「噂をすればかよ……」
俺はそう愚痴りながらも、待たせると悪いと思ったので、少し早歩きで結衣の元へと向かった。
「どうした、結衣?」
「えっとね、今日から少しの間両親が出張で……」
「分かった。いつも通りだな」
「うん。ありがとう、千尋」
俺は両親が出張というワードを聞いて、瞬時にそう答えた。
なんせ、それより先をこの場で言われると、えらい騒ぎになるからだ。
「ただ、今日は一緒に帰れないから、先に居てくれ」
「分かった。じゃぁまた後でね」
「おう」
そして、手短に要件を済ませて、俺たちは別れた。
だって、視線が痛いから。
ちなみに、さっきの要件の内容は、お泊り会だ。
会とはついているが、別に楽しいものではない。
ただ単に、料理などの都合で俺たちと一緒に生活すると言うだけだ。
まぁ、家族ぐるみで昔から仲が良かったので、俺たちはそんな風にお互いの家で泊まっていた。
最も、最近ではこういったときのみだが。
だから、こんな内容を喋られたらやばかったのだ。
「どうしたんだ?」
俺が席に戻ると、裕翔がそんな疑問を投げ掛けてきた。
「別に、ちょっと連絡事項があっただけだよ」
「そうか」
俺は嘘は言わずに話を濁した。
だって、馬鹿正直に話す必要ないんだもん。
放課後になった。
俺は夢と帰宅しながら、明日のことについて話していた。
「だから、悪いけど明日は一緒に登校できない」
「まぁ、事情があるなら仕方ないけど…あんまりサボると分かってるわよね?」
「それは分ってるから。ノートをチラつかせるのはやめよっか」
「ならいいけど」
毎度のごとく俺のノートを脅迫道具に使う夢。
それにしても、毎回のように出してくるのは、もしかして毎日持ち歩いているのか?え、恥ずかしいからやめて欲しいんだけど。
「取り合えず、明日は分かったわ。帰りは大丈夫なの?」
「あぁ、それは全く問題ない」
「そこはきっぱりと言い切れるのね」
「ほんと、朝だけが忙しいから」
「まぁどんな事情があるのかは知らないけど頑張って」
「ありがとう」
そうして、俺たちは別れた。
そう、今日のお泊り会は、明日の朝が肝心なのだ。
そして、俺はさっさと歩いて家までたどり着いた。
「ただいま~」
「お帰り、千尋。掃除機かけといたよ」
「悪いな、ありがとう」
「今日は泊めてもらうからね。それぐらいはしないと」
「そう言ってもらえるとありがてぇ」
帰宅した俺は、綺麗になっているリビングを見ながら、結衣に感謝の気持ちを述べた。
それにしても、結衣は何気に完璧なのだ。
勉強もかなり上位。運動もかなり上位。家事も大体できる。だから、傍から見たら超人なのだ。
「そう言えば詩織ちゃんはまだなの?」
「あぁ、もうすぐ帰ってくるはずだぞ。時間的に」
俺がそう言うと、ガチャっという扉の開く音が聞こえた。
「ただいま帰宅しました。お兄様、帰っていたのですね」
そして、恐らく俺の靴を見つけたのだろう。
礼儀正しく、若干興奮気味にそう言いながらリビングに入ってきたのは俺の妹改め義妹である
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