10話 オタクとアキバは一心同体
早速駅から飛び出した俺たちは、約1ヶ月ぶりの秋葉原にテンションが上がっていた。
まぁ、なんと言っても秋葉原だ。
今日のためにどれだけ出費を我慢してきたことか…。
「どこから行く?」
「そうね……やっぱりゲーマーズからじゃない?」
「まぁ王道だな」
そう言って、俺たちは早歩き……はせずに、ゆっくりと歩いて向かった。
「今日はサイン本目当てだったんだけど、残ってて良かった〜」
「だな、お前が遅れてくるから無くなってるかと思ったぞ」
「な、だから謝ったじゃない!」
「まぁ有ったんだしいいだろ」
「え、それあんたが言うの…」
「逆ギレした奴が良く言うよ」
俺はそんな風に呆れ気味に言うと、自分もお目当ての本を適当に見繕ってレジへと向かった。
「次はどうする?」
「もういつもの定番コースになってんだろ」
「だね」
そして、店から出てきた俺たちは、駅から近い順に巡り、最後気になった物を帰りにもう一度買うと言う順路で店をめぐることにした。
「ちょっと休憩ね」
「あぁ、ようやくだよ」
お昼が過ぎ、時刻は1時半。
とっくにお腹が空いていた俺たちは、近くにあるファーストフード店に入った。
「いっつもなんだかんだ言って、ここで1、2時間時間使っちゃうのよね」
「まぁ、俺ら学校ではあんまこういう話できないから、ここでしか喋れないからな」
「そうよね~。でも、結局週に2,3回電話で話してるけどね」
「それはそうだけど、現地で話し合える機会は大事だからな」
「ほんと、あんたってそう言う所あるよね」
俺が熱くそう語ると、椎名は苦笑いしながらも微笑んでくれた。
「それで、今回あんたが買ってた本って、確か最近話題のラブコメよね」
「あぁ。確かアニメ化も決まってたはずだ」
「何々?チヒロはそう言うラブコメみたいなのに憧れてるの?」
「ば、馬鹿言え!こういうのは物語、創作物だから面白いんだよ。リアルだと…こう、何かと大変なんだよ……」
俺が苦い顔をしながらそう言うと、椎名はハッと何かに気が付き、同情するような口調で話出した。
「そう言えば、あんたの今の状況も、そうとうラブコメ展開よね」
「言うな。かなり苦労してんだから」
俺は頭を抱えたくなるのをぐっとこれ得ながらそう言った。
「美少女四天王なんて、誰がつけたのか知れないけど、そんな美女4人と唯一接点があるのがあんただもんね」
「お前、ちゃっかり自分も入れてんじゃねぇよ…」
「ワタシが入れたって言うか、周りがそう言ってるんだから、それを認めるのが常識的ってもんでしょ?」
「ったく、どいつもこいつも…」
夢に続き、椎名もまた客観的に見て自分が美少女であることを理解してる。
しかしこいつは、俺といるときはこんなだが、学校ではお嬢様。だから、謙遜している姿は容易に想像できる。
そして、それを思うたびに笑いがこみあげてくる。
「てか、お前今日はあんまり買ってないな」
「そう?でも、後は約束のゲームセンターも残ってるし」
「そうだったな…」
そう、今日俺たちが来たのは、単純に秋葉原を楽しむ為でもあった。が、本題はこの前のテストの掛けの結果だった。
俺と椎名がした勝負内容はこうだ。
俺は国語、椎名は総合の順位で競う。
俺も椎名も1位でなければ負け。そして、同点の場合は椎名の勝ちというルールだ。
一見俺が不利にも聞こえるルールだが、普通に考えて総合で1位を取ると言うのは容易なことではない。
まぁ、国語で1位を取るのも他の教科に比べて難しいのだが、だからこそギリギリ勝負が成り立つのだ。
そして、負けた方は相手の条件を一つ飲む。
俺は椎名に映画代を奢らせるつもりだった。そして、椎名は俺にクレーンゲームで1つ景品を取る。なお、その商品は俺が不可能と判断しない限り椎名の欲しいものを取ると言う物だった。
俺は見事に同点で負けたので、今日は1つとらなくてはならないのだ。
「それじゃ、もう少し話したら行きますか」
「あぁ、そうだな」
そうして、俺たちはできるだけ悔いの残らぬようアニメの話に花を咲かせた。
「さすがチヒロね。まさか2回でとるなんて……」
話しきった俺たちは、すぐさまゲームセンターに来たのだ、約5分ほど悩んだ椎名がようやく決めた商品を、たった今僅か2回でとったところだった。
「案外今日は調子が良かったよ」
「せっかく買ったのに、200円しかかからなかったなんて、なんかショック」
「いや金額の問題じゃねぇだろ。むしろそんな値段でとれたんだからラッキーだろ」
「まぁ、確かにクレーンゲームで多額を使っても、私には何の得もないもんね」
俺の適格な指摘に納得したのか、頷きながら椎名がそう言った。
それにしても、2回って、調子よすぎだろ…。
俺が取ったのはうつぶせ寝しているタイプのアニメキャラのぬいぐるみだった。
ほんと、ぬいぐるみなんて取りにくいのに、何で取れたんだろうか。
そんなことを俺は思ったのだが、これ以上考えると、何か不吉なことが起こりそうな気がして、辞めた。
「結果的にワタシにはものがあるんだから、良いかな」
そうして、椎名が大事そうにぬいぐるみを抱えた。
うん、やっぱり普通に可愛いな、こいつ。
俺はそんなことを軽く心の中で思って、そして消し去った。
「じゃ、今日はお疲れ様」
「おう、今度はまたテスト明けかな」
「そうね。ココに来るのはそうなると思うわね」
「じゃぁまたな」
「うん、また」
こうして、俺たちは駅のホームで別れた。
「やっぱり、昔から絡みのあるやつといると楽だな」
俺は閉じる電車のドアを見ながら、そう呟いた。
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