7話 勉強会にアクシデントはつきものです
勉強の準備を終えた俺たちは、さっそく勉強会を始めた。
「まず、国語の解き方なんだけど、選択肢は見ない方がいいよ」
「え?そうなの?」
「そう。問題を見るのはいいんだけど、例えばこの中でどれが正しいか選べみたいな問題があった時に、先に選択肢を見ていると時間がもったいないし、変な先入観とかが入るから駄目なんだ」
「なるほど。じゃぁ、設問を見るのはいいけど、中身は見ちゃダメってこと?」
「まぁそんなとこ。あとは、自分でコレだと思う所を探して、同じのがあればそれを選ぶって感じ。選択式じゃなかったらそのまま書けばいいだけかな」
俺はそんな感じで、とりあえず覚えておけば楽になる情報をいくつか教えた。
そして、それを踏まえて問題に取り組んだ結果…。
「どうしてできないんだろう…」
西宮は泣きそうになりながらそう言った。
そう、結局あまり変わらなかったのだ。
確かに国語という教科は一朝一夕でどうこうなる物ではないのだが、西宮ぐらい元々できる奴なら問題はないと思っていたのだが……。
「それにしても、鈴橋くんってすごいよね」
「まぁ、国語だけだけどな」
同じ問題を全問正解した俺に、西宮が羨ましそうに且つ尊敬のまなざしで俺を見つめてきた。
まぁ、国語以外は西宮は雲の上の存在なんだけど。
「そう言えば、どうして鈴橋くんはそんなに国語が得意なの?」
他は平凡なのに、国語だけ以上に高い俺に、西宮がそんな素朴な疑問を投げかけてきた。
俺は、若干濁しながら返答した。
「まぁ、昔から本が好きだったから、かな」
「やっぱりそうなんだ」
まぁ、本と言っても大したものではないのだが、そんなことは今は言わない方がいい。
これはアイツとだけの秘密でもある。
「でも、西宮も頭はいいんだから、コツさえ掴めれば絶対大丈夫だよ!」
「そうかな?鈴橋くんが言うなら間違いないね」
そう言って彼女はまぶしく笑った。
そして、終えたちは急に恥ずかしさがこみあげてきて、サッと顔をそむけた。
「……」
「……」
またしても沈黙の時間が流れる。
「す、鈴橋くんはどうして本を読みだしたの?」
話題がなくなったので、西宮がそう質問してくれた。
「えっと……」
そして、俺は答えようとして詰まった。
あれ?どうして俺は本を読みだしたんだ?
確かに今俺が読んでいる類の本は、どうして読みだしたのかは分かる。
でも、それは元々普通に本を読んでいたから読みだしたのだ。
では、どうして俺は本を読んでいたのだろう?
そう思った瞬間、ふとある記憶がよみがえってきた。
どこだったか分からない。
でも、確か海の見える丘の上だった。
俺は何をするでもなく、ボーっとさまよっていた。
そこで一人本を読んでいる少女に遭って、確かその子に……
「鈴橋くん?」
俺がそう考えこんでいると、西宮が心配そうに声をかけてきた。
「あぁ、悪い。えっと、本読みだしたきっかけだよな」
「え、う、うん」
「名前は覚えてないけど、どっかで出会った女の子に本を貰ったんだ」
「そうだったんだ。何だかロマンティックだね」
「今思えば確かにそうかもな」
俺は少し懐かし気にそう言った。
「お茶のおかわり、持ってくるね」
そう言って、西宮はコップを持って部屋を出た。
そしてまた暇になった。
時間が経ったおかげで、だいぶ部屋にも慣れてきた俺は、少し辺りを見回してみた。
「相変わらず女子って感じの部屋だな……」
「でしょ?」
「うん……」
俺がそう呟くと、肯定の返事が返ってきた……え?
「え?」
「ニシシ…」
俺はさっと振り返ると、そこには西宮によく似た美形の女の子がいた。
「誰!!」
「アハハ」
俺がそう言うと、サッと立ち上がって、彼女は礼儀正しく名乗った。
「どうも、花ねえの妹、
「西宮の妹さんか。どうも、初めまして。鈴橋千尋です」
彼女が名乗ったので、俺も名乗った。
それにしても、西宮に妹がいたことも驚いたが、何より西宮にそっくりですごく微震だなと思った。
俺がそんな風に考えていると、西宮の妹が迫るように質問をしてきた。
「チヒロ君か。ねぇねぇ、チヒロ君は花ねえとどんな関係なの?彼氏?彼氏なの?」
「え、え?」
あまりの捲し立てように、俺は慌ててしまった。
「いや、彼氏とかではないけど……」
「じゃぁどうして家に来てるの?」
「え、えっと勉強会で……」
「ほんとに?ほんとかな…下心とかあるんじゃないの?」
「いや、えっと…」
ぶっちゃけ下心はありますけれでも。
そんな感じで俺が困っていると、ちょうどいいタイミングで西宮が戻って来た。
「ちょっと海!鈴橋くん困ってるから!」
そう言って、西宮が海ちゃんを止めてくれた。
が、今度はターゲットが西宮に変わった。
「ねぇ花ねえ!チヒロ君って花ねえの彼氏?彼氏なの?」
「違うよ。今日は勉強会で鈴橋くんに勉強を教えて貰ってるの」
「ほんとに?」
「ほんとだよ。それに……」
否定してもなかなか食い下がらない海ちゃんに、少し気圧され気味だった西宮だが、少しのための後、決定打を与えた。
「鈴橋くんには彼女がいるから……」
そう言った西宮の顔が、一瞬暗いものに見えたのは、気のせいだったのか。そうではないのか。
そんなことは考える暇もなく元の優しい顔に戻った西宮は、妹に対して優しい口調で言葉を放った。
「だから、そう言うんじゃないんだよ、海」
「お姉ちゃん……」
海ちゃんは、西宮の様子を見て、少し暗い表情をしたが、すぐに元bに戻って部屋を出って行った。
「ごめんね、妹がお騒がせして」
「いいよいいよ」
「じゃぁ、そろそろ再開しよっか」
「そうだな」
そうして、俺たちは後半戦へと臨んだ。
その後は、何事もないまま勉強会は無事終了した。
「それじゃぁまたね、鈴橋くん」
「うん、また」
そう言って俺たちは別れた。
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