【非公開】9月10日 この頃、僕が考えていた事

 君の書く童話の主人公は大抵たいてい動物で、オスカー・ワイルドの“幸せな王子”や、宮沢賢治の、“よだかの星”の“よだか”のような、機会があれば躊躇ためらい無く自己犠牲に走ってしまう、慈悲と慈愛に溢れた生き物だった。


 どこか普通の生き物とは思えない、”実は神様でした”、とか、最低、”そして神様になりました”、というオチがありそうな生き物たち。


 それは君にも言える話で、僕には君が、余命宣告を受けている人間にはとても思えなかった。家族だけでなく病院内で色々な人に笑顔で挨拶し、世間話に興じる姿を見て、本当は君の言った病状なんて嘘なんじゃないかと何度も思った。


 僕は、君の小説を読みながら「そんなに正しくなくて良いんだ」、と言ってやりたかったし、余命1年の君が無理して明るく振舞っているのだとすれば、無理しなくて良いんだ、と、言いたかった。

 おこがましいけど、せめて、僕の前で、だけでも。

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