14. 決まり
「あの人をハウスに泊めたのはいい。相談する暇がなかったっていうのも分かる。だけど、俺たちにこれ以上なにができるんだ」
大きくかぶりを振ってから、エルは答えた。
「決まってるだろう。リンデの探してるものを、みんなで一緒に見つけるんだ」
「そう言うと思った」
アイクは呆れた表情で息をつく。
「あの人の話を聞いてたのか? あんなあやふやものを見つけられるはずがないだろう。サントークにあるっていう保証もない」
「見つからなかったら、クレストでも首都でも、どこへだって探しに行けばいい」
エルはそう言ったが、十二歳の少年が気ままに町の外へ行けるはずがないことは分かっていた。隣町のクレストでさえ六十キロも離れているのだ。週に一度出ている長距離バスに乗るには、数年間は小遣いを貯めなければならないだろう。
「もしあの人が嘘をついていて、探し物なんてどこにも存在しなかったらどうするんだ?」
「彼女は嘘をついていない」
「どうしてそう言い切れるんだよ」
「それは——」
脳裏に昨夜の光景が浮かび上がった。空を流れていった青い光を目にした時、エルの中でなにかが動き出した気がした。これはきっと、退屈な日常を塗り替える重大な事件なのだ。この感情をみんなに伝える言葉を、エルはひとつしか知らなかった。
「だって、面白そうじゃないか」
「それじゃあ答えになっていない。もしかしたら、あの人は俺たちを騙そうとしているのかもしれないんだぞ」
「しつこいぞ、アイク。そんなことないって言ってるだろう」
「しつこいのはお前だ。ちゃんと説明してくれ」
堂々巡りの会話を、ようやくロビィが止めた。
「やめなって二人とも。喧嘩しても仕方ないよ」
二人が黙ったところで、フレディが消え入るような声で呟いた。
「僕も、面白そうだと思う」
少し顔を赤らめた赤毛の少年は、恥ずかしそうに俯いた。
「アイクの言ってることのほうが正しいと思うけど……できることだけやってみればいいんじゃないかな? それでダメなら大人の力を借りれば良いんだし。だって、宇宙人と一緒になにかするなんて、なかなかないと思う」
「なかなかっていうか、一生ないって」
笑い混じりにジャッキーが言った。
「まぁでも、面白そうっていうのはそのとおりだな。どうせやることもないんだし、暇を潰すにはちょうどいいか」
ロビィは黙っていたが、それはすでに彼の心がエルの意見に傾いていることを意味していた。彼がアイクに異論を唱えることはほとんどない。はっきりとエルに反対しないことが、すでにロビィの答えだった。
「みんなはリンデに協力したいって言ってるぜ、アイク」
黙って話を聞いていたアイクは、短く笑うようにして息をついた。
「分かった、分かったよ。みんながそう言うんなら、もちろん俺もやるさ」
アイクは口の端を上げて見せた。唇の片側を高く上げるいつものアイクの笑い方だったが、まだ完全に納得していないのか、それはどこかぎこちなかった。
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