11. ツリーハウスの仲間たち

 エルの不安はある意味で的中した。


「大変だ、エル。大変なんだ! こんなこと初めてだし、僕たちどうすれば——」

「すごいんだ。もう全然分からない……いや分かるんだけど、なんていうか——」

 ツリーハウスの前でエルを待っていたロビィとフレディは、エルの顔を見るなり喚き散らした。

 興奮している二人の話は要領を得ないが、なにが二人をそうさせているのかはすぐに分かった。エルは喋り続けている二人の横を抜け、ツリーハウスの梯子を上った。


 ハウスの中に入っていくと、アイクとジャッキーがこちらを振り返った。いつもは遅れてやってくるジャッキーまでいるとは、とエルは苦々しく息をつく。

 対照的に、部屋の奥にいるレインバケッツのユニフォームを着たリンデはエルを見て表情を明るくした。

「エル、おはようございます」

「……おはよう」

 帽子をかぶり直しながら彼は頷く。寝過ごしたせいで面白くない状況になったとはいえ、まだ彼女がいてくれたことに彼は安堵した。


「本当に顔見知りだったんだな」

 アイクはそう言って、エルに向かって意味ありげに小さく首を傾げた。

「てっきり俺たちは、この人の作り話だと思っていたんだけど」

「嘘じゃない。昨日、森で会ったんだ。それで、困っているみたいだったからここを使ってもらった」

「えー!」

 ツリーハウスの入り口から覗いていたロビィが、大袈裟な声を上げた。

「また森に入ったの? 危ないから、やめなってばぁ」

 ロビィの嘆きが終わるか終わらないうちに、アイクが言った。

「そこにフレディもいるのか?」

「ここにいるよ。僕だって話を聞きたいもの」

 赤い髪を揺らしながら顔を出したフレディを見て、アイクが提案した。

「ここだと狭いから、下へ降りよう。そっちのほうが、みんなで話しやすいだろう」


 少年たちは梯子を下りていった。最後に残ったエルはリンデを先に行かせようとしたが、彼女は足を止めてエルを振り返った。

「すみません、わたしのせいで面倒なことになっていますよね」

「そんなことないさ。きっとあいつらは、勝手に俺がこの場所を君に教えたことが面白くないんだ。ここは秘密の隠れ家だからさ」

 なるほど、とリンデが小さく呟いた。

「その服、似合ってるね」

 青を基調としたレインバケッツのユニフォームは、彼女の不思議な青と白の髪によく合っていた。

「ありがとうございます。この服はとても良いセンスです。それに、ジュースとクッキーもとても美味しかったです」


 すぐそばに立ったリンデは、彼よりもずっと背が高かった。こうして並んでみると、十センチは高いだろうか。

 昨夜森で会った時から二、三歳ほど上だろうとは感じていたが、実際はもっとずっと歳が離れているのかもしれない。

「それなら良かった。俺もジュースの感想を聞きたいと思ってたんだ」

「感想? あぁ、エルはオレンジジュースが好きなのですね」

「いや、別にそういうわけじゃないけど。ほら、さかさまだから」

「さかさま?」

 彼女は不思議そうな顔をしてエルが指さした空き瓶を眺めたが、ラベルが逆さまになっていることに気づいていないようだ。説明しようと思ったが、残念なことに、下から彼らを急かすジャッキーの声が聞こえてきた。

「なにやってるんだ。早く降りて来なよ」

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