人間失格 後半
最初は坊主と二人で寺を歩いて行く、俺はただついて
行くしか無かった、腕一本じゃ木を削って出てくる鬼を
とりあげる、俺にはこいつがわからねえ、だが坊主はそれを
作り続けろと言う、頭にきたら木に向かってひたすら斧を
振り落とす、そしたら鬼が出てくる、そしたら坊主にサルとほれと
その字だけはわかる、くだらねえといつも唾を吐きだす。
だが、その鬼を何故か寺の坊主は気に入りやがる
代わりに飯が出る、逃げたくてももう俺には腕一本で
生きていく事が出来ねえ、また頭にきたら木に向かって
斧を振り落とす、だんだん鬼が生きてるみたいになって
気持ち悪いのは俺だけだ。
そんな日が続き俺は一人で寺を歩いて行く事にした
もうあのくそ坊主と一緒にいるのは勘弁だ!
俺は仕方なく坊主に他所様から飯を奪わねえと言って
坊主から首にこれを外さないなら一人で良いと言いやがるから
仕方なくうなずくしか無かった。
(それは坊主の名前が書いてあるフダだった)
俺は首にぶら下がった物を見せると寺の坊主がいれて
くれるから楽でいい、話なんかしねえ、俺は木を削って
鬼をその寺に渡すだけだ、そうしたら飯が出るからそれを
食って少ししたら違う寺に行けと言われたからそうしてた。
そうやって俺は寺を廻るもうそれしか出来なくなっちまって
それでも俺は人間に心を開いたわけじゃねえ、そうするしか
無かったんだよ、もう俺には奪って生きる道がなくなっちまった。
俺をなんと言おうが構わねえが俺は仕方なくやってたんだ
今も昔も俺は変わっていねえんだよ、飯を食うやり方を変えた
それだけだ他に俺には何も思いつかねえ。
この左腕一本が無くなってから俺は仕方なく坊主の言うこと
をやってただけだ、だがなんでこんな話をしなくちゃいけねんだ
最後に聞かせてくれよやい!
『お前が作り続けた木彫りを見て感動した男から頼まれたんだ
昔、一人の青年が賊に腕を奪われてサルお前と同じく木彫りを
している男にな』
そうかい俺には関係ねえ奴だ、つまらねえことなんかを
俺の話なんかを聞きてえなんて世の中にはわからねえ人間も
いるもんだなやい!
これから俺をどうするんだ木にでも縛り付けるのかそれとも
川にでも流すのか?
「いや、サルさん私はあなたの話を書くだけで、それ以上は
何も無いです、サルさんの好きにしてください」
俺に好きなことをしろだって、ちゃんと話を聞いていたのか
やい、俺はもう同じことしか出来ねえんだよ、これからもずっと
ただ木に斧を振り落とす、そこから鬼を取り出す渡して飯を貰う
俺はもう他に自分が何をするとか考えられねえんだ。
俺はもう昔の俺じゃないのか?
俺はなんのために生きているんだ?
俺は今でも一人だそうだろ?
俺は人間だけどお前らと同じじゃないだろ?
俺は人間失格なんだろ?
「それは、これからサルさんが決めることだと思います
私には人に対して人間失格とは言える立場ではないので
そもそも人間に失格なんてあるんですかね
私には荷が重すぎる言葉です、ではもう会うことは
無いと思いますがサルさんお元気で」
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