@BombOmboM

 「好きな色は?」と聞かれると悩まず「赤」と答える。しかし、それはただの赤ではない。正しく答えるならば「血のような赤」というのが正解だろう。断じて僕は病んでいるわけではない。可愛い彼女もいて、人間関係良好、成績は中の上くらい。部活でもそこそこの成績を出している。とても順風満帆な人生を送っていると自分でも思う。ただ、何か心の中に穴が空いているような感じがする。なぜか満たされない。彼女と花火大会にいって綺麗な花火を見た時も、部活の大会で勝った時も、どこか空虚な気分の中にいる。

 今日も彼女と共に下校する。いつもの道に見慣れないものがあった。車に轢かれた猫だった。轢かれた直後だったのだろうか。体の周りに血が赤黒く光っていた。その瞬間、急速に自分の中にあった空虚な気分がどこかへ飛んで行った。同時に高揚感が生まれた。欲望が頭を支配する。「キモっ!早くどっか行こーよ!」彼女が何か言っている。今はそれどころじゃないんだ。話しかけないでくれ。もっと近くで見たくて猫のそばによった。中はどうなっているんだろう。筆箱の中にあったハサミで腹を割いてみる。「ねえ、何やってるの!汚いよ!どうしちゃったの?いつもの〇〇じゃないよ!」ああ、うるさいなあ。黙っててくれ。内臓が破裂してぐちゃぐちゃで血だらけの腹の中を見て興奮した。首あたりの動脈を切ってみた。血が噴き出てきた。「綺麗だ。」僕は恍惚とした表情でそう呟いた。「ねえ、キモい。こんな人だと思わなかった。」五月蝿い。僕は我慢の限界に達して猫を裂いたハサミで彼女の腹を刺した。「ああぁぁぁぁ!」彼女の絶叫が聞こえる。五月蝿い。ハサミを彼女の腹から引き抜き、首の動脈を狙って切った。首から血が噴き出した。うまく切れたみたいだ。もう彼女の声が聞こえなくなった。僕は頭から血をかぶったらしい。視界が赤くなっている。なんと綺麗な赤い世界なのだろう。彼女の腹を裂いてみる。猫とは比べ物にならないくらい綺麗だ。煙草も吸わない、酒も飲まない人間だから、当然か。まあ、高校生で酒も煙草もやっていたら補導されるが。死んでしまった彼女には関係ないか。子宮が少し膨らんでいる。気になって開けてみると、生き物が入っていた。ああ、そういえば3ヶ月ほど前にヤったな。気持ちよすぎて中に出したっけ。ゴムはつけたはずだが、穴が空いていたのか。「安全日だから大丈夫。」と言われて中出しした日もあったな。ということはこいつは俺のやつを呑んだのか。笑えてきた。内臓を見てみようと思って俺と彼女の完成していない子供の腹を裂いた。やはり臓器が未熟だ。全体的にかなり小さい。心臓なんか人差し指と親指で潰せそうだ。潰してみたらプチっと音がした。俺は彼女のみならず、自分の子供も殺したのか。罪悪感?不思議と生まれてこない。俺はそういう人間なんだろう。彼女の心臓を見てみたくて胸を開いてみる。何もつけていない胸を見ても興奮しなかったが、ハサミで開いたら興奮して下半身が痛いくらいだ。まだ少し心臓が痙攣している。今、心肺蘇生したら彼女は生き返るのだろうか?否。出血多量だから無理だな。やる気はないけど。なんか周りがざわざわしている。ふと、顔を上げてみるとたくさんの人に囲まれていた。こんなに人がいる。誰から切り裂こうか?目についた人間から腹を刺し、首を切った。俺は血の海の中にいるみたいだ。この世界はこんなにも綺麗で素晴らしいものだったんだ。俺は今、幸福感の中にいる。またあの空虚な世界に戻るのは嫌だ。頭の中で声が聞こえた。同感だ。返事をして自分の首を思いっきりハサミで切った。

「ああ、なんと美しいのだろう。」

俺の声が意識の外で聞こえた。






昨日の夕方無差別殺人事件がありました。

死亡者10名、怪我人26名。

そのうち7人が重症です。

また、犯人は警察が現場に駆けつけた瞬間自ら首を切って死亡したそうです。

「いやあ、ひどい事件ですね。」

「現場では作業がまだ続いているそうです。」

「続いてはお天気です。」






















俺は死んだのか。

体が切り裂かれているみたいに痛い。

「お前は11人も殺してその上罪を償わずに自らを

 も殺した大罪人だ。彼らがどんな思いだったの

 か自らの身をもって感じろ。」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


切られても切られても死なない。


でも俺から出た血だけはこの場に残る。


俺は血の海の中で笑っている。


なんて綺麗だろう。


天国なんか行かなくてよかった。


こんな綺麗な世界は地獄でしか見られない。


地獄に来てよかった。


沢山、人を殺した甲斐があった。


あはははははははははははははははははははは!


俺の笑い声が地獄の奥底に響いた。


俺は幸福の絶頂にいる。


死んでよかった。


あんなつまらない世界は二度とごめんだ。


俺はそのまま意識を手放した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@BombOmboM

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ