大きな勘違い
「きつい言葉ですまなかった。僕は大きな勘違いをしていたんだ」
「!?」
ミサキはケンジの言葉の真意が理解できず顔を上げた。
「僕はこれまで、君のトラウマを治そう努力してきた。それ自体が誤りだったんだ」
「私……覚悟できてるから」
ミサキは
「あの日の事故の率直な思いを聞かせてくれないか?」
不可解な問いに戸惑いつつミサキは答えた。
「予兆が三つ
「じゃあ、今はどんなどんな気持ち?」
ケンジはミサキの目をジッと見つめた。
「今は幸せだよ。後遺症もなく生活できていて、仕事もあって。彼氏もいて」
「そこだよ、オレが勘違いしていたのは!」
「訳わかんないよ。言いたいことがあるならサッサと言って!」
「じゃあストレートに言うよ」
いよいよだ……。ミサキは覚悟をきめた。
「『三つの予兆は悪いことが起こる予兆』、それ自体が誤りだったんだよ!」
「まだ分からないわ」
「事故に合った。それは不幸なことだ。しかし、あの事故がなかったら僕らは出会わなかった。そして、君は今、幸せだと言ってくれた」
「……」
「つまり、『三つの予兆は幸せを呼ぶ予兆だった』 オレはそう思うんだ」
「!?」
そんな視点で考えたことはなかった。
これまで、事故の辛さばかりが気になっていた。確かに、事故がなければケンジと出会うことはなかった。
「一理あるけど、何だか
事故の印象が強すぎて簡単に受け入れられなかった。
「じゃあ、君が間違いだと証明する」
ケンジはカバンに手を突っ込んで小さな物を取り出した。それは、小さな箱。
ケンジは小箱を片手に乗せ、もう片方の手で箱を開けた。中には指輪が入っていた。
小さなダイヤモンドが付いたかわいらしい指輪。
「オレと結婚してほしい」
ケンジは箱をミサキの方に向けて頭を下げた。
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