第38話 真の後継者

ついにやってきたか。


ついに、あのアルフレッド・ロイヤとダラス・ウルブレヒト両名が、満を持して王国軍司令官会議にその姿を現したのだ。


それぞれ伝説の剣豪と不敗の名将と並び称される王国騎士の両巨頭である。王国騎士の軍籍分離論をその実績で真っ向から反対する旧勢力の筆頭であり、そしてその実績には誰も文句をつけたくてもつけられない超実戦派の大将軍であった。


列席する将官達はもはや愛想笑いすらできない。何故ならばこの両名は自ら現場勤務を望まなければとっくに彼らの上位者となっていた二人であり、そして階級では下位であってもその戦績など彼らの及ぶ所ではないのだ。


「…ようやく、おいで頂けましたな…」

この会議の首座を務めるアリオス・ロードルは咳き込みながらそう言った。


「…長らく、席を温めておきましたぞ…」

そう言ってロードル中将は苦しそうに笑った。


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王国騎士最高会議長コリン・ロードルの弟アリオス・ロードルは、健康でさえあれば間違いなく典務長、いや議長になっていた人物であった。猟官運動でその座を射止めた兄コリンや、公爵の息子という以外に就任理由のないダリオなど問題にならない程の高潔な王国騎士であり軍人だった。


しかしその唯一の瑕瑾は軍人としてあまりにも致命的過ぎた。そして彼は王国騎士団の後方部長としてこの会議に居座り、病身を押して、長らく王国騎士の向後を託せる二人が現れるのを待っていたのである。


「長らく…」

ダラス・ウルブレヒトは辛うじてそれだけを言った。


その言葉に優しい笑みを浮かべるとアリオス・ロードルは再び咳き込み、そしてそれは収まる事もなく、長く、激しく続いていた。


「いかん!医者を呼べ!」

誰かがそう叫んだ。誰の目にもアリオス・ロードルの様態はおかしかった。ただ咳が激しいだけではなく、身体が小刻みに震えているのも分かった。


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アリオス・ロードルは緊急入院した。というより元々長らく入院中であり、医者が止めるのを無視して敢えてこの会議に出席していたのだ。


アルフレッド・ロイヤは痛ましい顔のまま、ダラス・ウルブレヒトの肩にぽんと手を置いた。ダラス・ウルブレヒトは身をよじってその手を肩から外す。


(…お前言ったよな?)


(…ただの相槌だし?)


二人の王国騎士は知っていた。武名や勇名はともかく、少将になりたての二人が王国軍司令官会議の首座に近い地位に登れば嫉妬ややっかみを避けられない事を。

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王国騎士アルフレッド・ロイヤの日常 @samayouyoroi @samayouyoroi

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