第7話 アルフレッド・ロイヤの期待
「お久しぶりです、父上」
アンソニオは折り目正しい礼で父親を出迎えた。
小さな邸宅ではあったが夫婦と赤子が住むには充分な広さである。単身で孫に会いに来るのはアルフレッド・ロイヤの習慣になっていた。
「いくつになったか」
アルフレッド・ロイヤは独り言のように娘に聞いた。
「まだ生後8ヶ月です」
分かっていた答えにアルフレッド・ロイヤは焦りを感じた。
父と共にベビー・ベッドのある部屋に入るとアンソニオは使用人を下がらせ家族水入らずとなる。と、同時にやや態度が改まった。
「だからさー父さん無理だよそれ」
アンソニオは父と二人きりの時になるといささかぞんざいな口調になる。嫌いなわけではない。むしろ不器用で実は適度にいい加減な父が好きな故の甘えだった。
アンソニオは夫ウォードを愛していたが、それと評価は違う。あの直情的なウォードが父の跡目を継ぐなどとても無理だと思っていた。
さりとて従兄弟のマクシミリアンを推すかというとそれも躊躇いがある。彼は彼で選民意識が強すぎて逆の方向でうまくいかないだろう。
さらにロイヤ男爵家の眷属の中はアルフレッド・ロイヤの跡目に息子や自身を推すものも多く、これもまたこれで揉め事が起こりそうだった。
そこでアルフレッド・ロイヤはこの生まれたばかりの孫に期待をしたいのだが、父の年齢と性格を知るアンソニオは、反対はしないがそりゃ無理だよと思うのであった。
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