第6話 アルフレッド・ロイヤの近侍
「殿!お見事でした!」
黒髪の若い剣士が馬で駆けより祝辞を述べた。
盗賊団討伐の帰路である。指揮官たるアルフレッド・ロイヤは思わぬ遊兵の奇襲を自ら打ち倒していたのである。
「お見事、では済まぬのではありませんか、ウォード大尉」
従士マクシミリアンはあからさまに険のある目で牽制した。
「あのような事態から身を挺して閣下をお守りするのが剣士の役目では」
ウォードの目にも険が宿った。
「俺は、いや本官は、どこぞのお坊ちゃまと違って秘書の真似事だけやっていればいいわけではないからな」
アルフレッド・ロイヤを挟んで視線の火花が散る。
「止めよ」
アルフレッド・ロイヤは小声で両者をたしなめた。不承不承2人はお互いから視線を外す。ふん、という鼻息が両方から聞こえた。
娘婿たる剣士ウォードと、姉の息子たる従士マクシミリアンは非常に険悪な仲だった。士官学校の同期で在校当時からお互いが気に入らなかった2人が、何の因果か親族かつ憧れの勇者の近侍同士ともなれば仲がいい訳がない。
アルフレッド・ロイヤは内心でため息をついた。
本来は働き者と言い難いアルフレッド・ロイヤはもうとっくに隠居したかったのだが、ほぼ同時期に身内となったウォードとマクシミリアンのどちらに跡目を継がせようかと考える間もなく2人の仲を知ってしまい、隠居するにできなくなってしまったのであった。
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