第13話 寂しさ

 翌朝、私達は港で別れることとなった。

和真君は、来たルートを戻る旅に、私は別の離島を目指して旅に出る。

別れは嫌いだ。悲しい気持ちは、いつだって重い。

弱っている私には更に重くのしかかる。


 だからこそ、笑って、また明日逢うかのように、さらりとお別れをしたかった。

そんな私の気持ちを察したのか、

「俺が見送るよ、立夏さんを。」

と言いって見せたチケットは、私の船より後の便だった。

「また明日、連絡するよ。話し合いの結果楽しみにしててよ。」

そう言ってアイスをくれた。


私は乗船し、デッキでアイスを食べながら彼を探した。

見つけた彼もアイスを食べていて、お互い笑いながら手を振った。

彼の優しさが身にしみて嬉しかった。彼なら本当に明日連絡をくるだろう。


 出航後、船内に入った。急に寂しくなってスマホを取り出した。

あまり意識したくなかったので、サイレントにしていた。

そのため、未読のメールや着信履歴が多くあった。

旦那からのメール

『悠大が、久しぶりに学校へ行ったよ。

何か困ったらいつでも連絡して。ゆっくりしておいでよ。』


 悠大が学校へ行けて良かった、ほっと胸をなで下ろす。

悠大に連絡したかったが、今は干渉しない方がいい気がした。


文面を見て、旦那はいつだって優しい。

優しいのだか、いつだって遠いのだ。

彼には彼の世界があり、その境界には高い壁がある。

私には入れない、何度ぶつかってもこの壁は壊せなかった。

結婚当初それが、苦しくて何度も涙して離婚を考えた。

勇気の無かった私は結局、彼との壁に気付かないふりをした。

孤独に蓋をしたのだ。でもこの蓋は不定期にズレて寂しさが漏れる。

その度に、また蓋をし直す。この作業をもう何年もやってきた。

このままだと、きっと死ぬまでこの寂しさや孤独から抜け出せない。

いつかこの寂しさや孤独から解放されたい。私は恐怖で震えながら切に願った。


 そんな事を思っていると、いつの間にか眠っていたようだ。

目が覚めると頬の涙の跡が引きつったが、少し心が軽くなっていた。

もうすぐ中継の港に着く。ここで船を乗り換るのだが、何処へ行こうか。


そうだ南だ!温かい気候は、きっと冷えた心も暖めてくれるはずだ。

夏の残り香が漂う、できるだけ南へ行こう。





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