4F:リハビリの話

部屋を片付けた。物を捨てた。ごみ袋いっぱいになった元私物を見て、こんなに溜まっていたのかと驚いた。


家に帰って食べて寝るだけの毎日では、部屋の片付けなどできるわけもなく物は積み上がるばかりだった。ちょっとやる気があった時に頼んだ通信教育のパンフレット、読みたくて買ったはずなのに一回も開けていない本、何故か急にはまって買ってしまった某キャラクターのぬいぐるみ。物の多さにため息が出て、圧迫感に気は滅入る。


何も見なかったふりで寝につくことだけは上手くなったここ一ヶ月。それを正したのは、なんだか綺麗な青空の日だった。


なんともない、普通の日だった。


気がつけば手にはゴミ袋を握っていて、私の目は物の価値をジャッジするフィルターをかけている。何故だかわからないが、一切の迷いなくいるものといらないものをはっきりと分別することができたのだ。何かを迷っている暇もなく、何かに引っかかる余地もなく。ただ今の私にいるものといらないもので、淡々と分別をこなしていく。


たまに強く吹き荒ぶ風が自室のドアを揺らす。巻き上がった埃が鼻をついてくしゃみが続く。時々ペットボトルのコーヒーを煽り飲んで、独特な味に顔を顰める。


そんなこんなで気がつけば数時間。私の目の前には大きなゴミ袋が二つ並んでいて、中には見覚えのある元私物たちが詰まっていた。


試しに中を覗いてみる。そこにやっぱりやめたと撤回したくなるものはなく、全てが今の私に要らないと感じるものだった。


全てが、さよならしたくなるものだった。


こんなに物があったことにも、こんなに溜め込んでいたことにも、こんなになるまでやる気が起きなかったことにも笑うしかない私の口から漏れたのは勿論笑い声。くすくすと言う小さなそれは、私の耳を通過していく。


ここ一ヶ月の負債がこれで解決した気がした。そんな簡単になくなる物ではないが、そう思いたくってしょうがない。


今日はとても綺麗な青空で始まって、今は綺麗な夕焼けだ。


両手に抱えてごみを出す明日も、どうか晴れていますように。

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