RF:夜のレシピ
安心して歩けるのはいつだって夜道だ。
女の夜歩きは怖い、危ないだと言われても、安心して歩けるのは夜道だった。
街灯が道を示す世界では、いつだって軽やかに足が運ぶ。例えば、クルリと一回転してみたところで気づく人は少ない。
鼻歌を歌ったところで「誰が」とすぐに突き止めることは出来ないだろうし、私がどんな顔をしていても正しく認めることは難しい。
月のある夜も、月のない夜も好きだった。オリオン座が光る空も、星座がわからない空も好きだった。
それは、いつまで経っても変わらない。
普通に生きていられた時も、鬱と言われた時も、そこから少しずつ成長している今も、変わらない。
何せ、自分の姿形さえ溶け込んでしまいそうなこの時間が好きだから。強気に引いたアイライン、気分を高めたくて選んだリップ。それらをクレンジングする前に闇に溶かす時間が好きだから。
だから、だろう。今日も私は鼻歌を歌いながら上機嫌に歩を進める。普段は恥ずかしくて聞けない、熱烈な応援歌なんかを聞いて。決意を固めて、よしやるぞと意気込んで。
ーーまあ、そんな決意は大体寝て起きたら消えてる弱いものだけど。
そんな不確定で不安定で幻想のような、夜の時間。
明日にはゆるやかに消える決意を固めながら、上機嫌に歩くのだ。
今日の私をふやかしながら明日へのちょっとした決意を固めて、ベッドで眠りで溶かして作り直す。
さあ、明日の私はどういう形になるだろう?
……今日よりはまともであればいいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます