第4話 目標を決めるとより楽しくなるけど気を付けないといけない

 ちゃんとした名前を付けたからなのか、俺の小説のPVは着実に伸びていた。『読みます企画』で読んで貰える率もだんだんと上がっていった。

 やっぱり《ほほほほ》みたいな人よりも、それなりにちゃんとした名前の《日諸 畔》の方が信用されるのだろう。

 名前はすぐに俺のお気に入りになった。この世界での俺は、日諸おじさんだ。


 SNSでの交流も少しずつ増え、辻フォローおじさんの結果、フォロワーさんが三桁となっていた。あれ、俺も化け物の仲間入りか?

 宣伝目的で始めたのだが、交流そのものが楽しくなっていた。

 小説とは全然関係ない、ロボットアニメ関係の人などとも繋がることができた。敬遠せずに、もっと前から始めてもよかったと思ってしまうくらいだ。


 自作も順調に更新を続けられ、やっと二人目のヒロインを登場させられた。

 後から指摘を受け付けたのだが、物語が動き出すのがWEB小説にしては遅すぎたそうだ。確かに、メインの三人が揃うまで10話以上使うのは遅すぎた。それまでに飽きられても不思議ではない。

 でもね、仕方なかったんだ。だって前フリをしっかりとやりたかったんだもん。


 ちょいちょい頂くご意見に『日諸さんの作品は公募向き』というのがある。大変ありがたいご意見だ。

 しかし、俺は構ってちゃんなのだ。1冊分の小説をストイックに書き続けることなどできない。

 ちょっと書いたらすぐ投稿して読んでもらって、感想がほしいのだ。オブラートを突き破るほどにチヤホヤされたいのだ。いつか『日諸さんすごーい』などと言われ、自作の話題でキャッキャウフフしたいのだ。


 俺の勝手なイメージだが、幾多のWEB小説家が欲して欲して欲しているものがある。

 それが、レビューだ。

 その小説に感想だけでなくレビューが書かれるということは、他の誰かにもおすすめしたいと思ってもらえていることに他ならない。

 つまりは自らの小説が、大きく認められたという証なのだ。

 それに、PVが増える希望の星にもなり得る大変ありがたいものでもある。

 ランキングに載るような作品は大量にもらっているのだが、弱小な新参にとっては実在が疑われるようなものだ。


 SNSを見ていると、FAなるものをもらっている作家さんを目にすることが多々あった。

 某超有名ロボットアニメのオタクである俺は当初『フルアーマー』だと思っていたのだが、この場合は『ファンアート』らしい。

 どうも、素敵な小説を書いた方が、プレゼントとしてイラストをもらうことをフルア……ファンアートと呼ぶらしい。

 自作のキャラクターを描いてもらうなんて、絵心のない俺には憧れの的だ。いつか描いてもらえる機会があるといいなぁと思ってしまう。


 ここにきて俺は、創作をやるにあたっての目標を決めることにした。 なんとなく書き始めたが、やっぱり目標はあった方がいい。

 モチベーションにもなるし、達成した時には自己肯定感が爆上がりするだろう。


 とりあえず思いついたのは4つ。

 1.(俺基準で)たくさんの人に読んでもらう

 2.(俺基準で)ちゃんとした形で完結させる

 3.FAをもらう

 4.レビューをもらう


 この中で、俺自身の努力で達成できるのはひとつしかない。他は、どなたかに与えてもらわないと不可能なことだ。

 結局のところ、俺は自己満足とはいいながも、誰かに認めてもらいたいのだ。『すごいね』と言ってもらいたいのだ。

 そんな浅ましい自分を再確認しつつ、それでもいいかと認めつつ、目標に向けて進んでいくことにした。


 とはいえ、やることはこれまでと同じだ。

 自分が面白いと思える小説を書き、SNSで楽しく交流ついでに宣伝をする。それ自体を楽しむのが主目的である。

 目標はあくまでも、楽しむための手段のひとつだ。

 経験上、人間は手段と目的が逆転しがちだ。しっかりとした意思を持ちつつ、楽しんでいきたいと改めて心に決めた。


 そして、ついにその日がやってきた。

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