第3話 リーベス・クライネス゠メーチィシェン

 リーベス・クライネス゠メーチィシェンこれがこの世界での私の名前だ。


 結局私は彼女—創世の女神デアーゲネシス—の世界に来る事を選んだ。


 —ナッファヴァヴェルト—


 それが彼女の世界の名前らしい。私がいた世界の隣に在る世界ということだ。どういう風に世界が隣り合って存在しているかとかさっぱり想像出来ないがデアがそういうのだからそうなのだろう。


 そう、デアは自分の事をデアと呼ばせるのだ。流石に異世界の女神様を愛称で呼び捨てには出来ない、と最初は抵抗したんだけど……女神様、デアーゲネシス様、デア

様、で結局——


『デアって呼ばないと口きかない!』


 と駄々をねた上、むくれてそっぽ向くものだから—デア—と呼び捨てにする事になったんだよね。


 この事からも分かる様に異世界の最高神だと言うのに異常に私との距離が近い。

 聞いた所によると、感情移入が激しい上に超が付く位の構いたがり、と他の女神達にわれているそうだ。


 で、それらが発揮された結果、私は超好待遇で彼女の世界に転生したわけだ。


 そんなんじゃ世界の管理、色々大変なんじゃないの? って聞いた所。

 自分の世界は他の女神達に現場を任せて、自分は決済だけする管理職みたいな事をしていてほぼ見ないようにしているって言われた。


 それじゃほとんど仕事してないんじゃないの? って聞いたら物凄く目を泳がせた末に——


『うん』


 ——と頷いた。って何だよそれ! 可愛いかよ! お前何万歳だよ! え? そこまで行ってない? 私にとっては誤差みたいなもんだ!


 で、じゃあ仕事してないなら何してんの? って聞いたら、私の時みたいに他の世界をのぞいてるって。そんな事言われたらもう何も言えないよね? だってそのお蔭で私は転生出来たわけだから。


 で、そんなことしてたら当然私みたいにちょっかい出したくなる子がいる訳で、その度にその世界の神様に阻止されてたんだって。

 と云うのも、世界間の魂の移動は禁止されてるんだと。そもそも魂はその世界の輪廻に最適化されているので、他の世界では適応しないのが普通だと。

 仮に適応出来たとしても世界が離れていれば移動させるにも神様の神力的なものが多大に掛かるし、魂自体への負荷も相当なものになり耐えられないと。


 で、可能性があるとすれば、魂の形質が似た隣接した世界となると。

 まぁそんなものはまず存在しないのだけれど、つくってしまったが此処に居た、そうデアが創ったナッファヴァヴェルトは私が居た世界の魂をほぼコピーして創った魂を使っているのだ。


 それでも禁止は禁止、それに世界間の干渉は慣習的に禁忌となっていたので、デアはこれまでことごとく私が居た世界の神様に阻止されていたらしい。


 で、デアも自分の行いをかえりみた。行き当たりばったりでは駄目だと。その場でやり始めても間に合わないと。だから事前に準備をしておくのだと。

 そして用意していた様々なくわだてを私の時に使ったと。その結果は見事に私の魂をさらう事に成功したと。


 それってめちゃくちゃ怒られるんじゃないの? って聞いたら——


『うん。たぶん』


 ——だってさ。だから私はデアがやって良かったって思えるくらいこの世界で好き勝手して楽しむことを決めたんだ。


 まぁ心残りは残してきた両親と妹の事だけどそれは仕方ないよね? ろくに親孝行も出来ずに親より先に死ぬなんて親不孝だし、小っちゃい頃に迷惑を掛けた妹にはもう少しは姉らし事をしてあげたかったな。


 もうどうしようも無い事だから考えてもしょうがない。だから家族には出来なかった事を、この世界の幼女達を幸せにする事だけを考る事にしたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る