第一章
第4話 ナッファヴァヴェルト
そんなこんなで転生した私事、リーベス・クライネス゠メーチィシェンは、現在どこぞの街道沿いの草地に放り出されていた。
と言うのもこの世界についてざっくりと説明して貰って、
こりゃやばい! と急いで転生されたので候補地のどこか何だろうけど、現在地がどこなのか分かりません。
あぁ、もっとちゃんとお別れしたかったな……お礼ももっとしっかり言いたかった。
『
『デアには感謝してるよ。ありがとう。私幸せになるよ!』
これが私達の最後の会話だ。あぁもうデアには会えないのかなぁ……いつか会いたいなぁ。
早速感傷に浸っちゃったけど、さてこれからどうしようかな。
デアの世界ナッファヴァヴェルトは簡単に言うなら剣と魔法のファンタジー世界だ。中世後期か近世のはしりくらいの感じ何だろうか、聞いた感じは。
まぁそこに魔法がある時点であっちの世界とは全然違うのですがね。
その魔法とは、この世界に存在する魔素を利用し望んだ現象を起こすものである。
この世界で魔法と呼ばれるものは二つあり、直接魔素に働きかける純粋魔法と、術式に魔素を走らせて発動させる魔術式に分けられ、一般的に前者は魔法、後者は魔術と呼ばれているらしい。
魔法は純粋に才能が無ければ使えないが、魔術は術式さえ構築出来れば、その術式の発動に必要な魔素を操る能力があれば使う事が出来る。
それぞれの使い手を魔法使い、魔術士と呼び、魔術士の中でも術式を魔素で構築してそのまま発動する使い手を特別に魔道士と呼んでいたりもする。
因みに私は魔法使いです。特典もりもりなもんで。
まぁ魔素には他にも役割があるんだけどそれはまたの機会に。
魔法についてのおさらいをしたところで、試し撃ちをしたいところです——
幼女が襲われている!? 至急現場に向かいます!!
うぅ~、一番速く辿り着けるのは……やはり転移か、ぶっつけ本番とはね。仕方なし。幼女の安全が最優先ですからね!
先ずは探知魔法で幼女の正確な位置を確認!
ゲームなんかで出て来るレーダー画面をイメージして……
「探知!」
魔素を電波に見立てて放つイメージ。
一先ず周囲に敵性体はなし……幼女確認! 近くに敵性体がいるね……でも幼女は無事みたいかな? ……ん? まだ探知範囲が広がってく……うわ、敵性体の反応がどんどん増えて……って——
「広い広い! もういいって!」
ふう、どんだけ探知範囲広いのよ……ってそんな事してる場合じゃなかった!
幼女の周辺まで探知範囲を縮小して幼女を再確認……うん、まだ大丈夫そう。
それじゃあ全体を見れるように、幼女に対して敵性体を挟んで反対側に転移で。
イメージは某龍球の瞬間移動的な感じで……目標は探知魔法の座標で……
「転移!」
次の瞬間、目の前には馬車と魔物!? おおっ成功した!
成る程、馬車が魔物に襲われていると、まさにテンプレ。
で、あれが魔物か……こっち向いてないから顔は分からないけど、四足の獣っぽいかな? 見た感じ体高一メートル、体長二メートルってところか? でかっ!
でも、あの魔物達、馬車を無視してちょっと離れたところで
探知に引っ掛かってなかったって事は……そう言う事ですよね。
でも、そのお蔭で馬車の方はまだ無事みたい。幼女の為に尊い犠牲となったぞ! 名も無き護衛達よ!
じゃあ取り敢えず馬車が襲われ無いように壁で馬車を囲っちゃおう。
う~ん、壁が馬車を囲うイメージで……
「壁よ!」
気合いを入れて魔素を送る。
次の瞬間、馬車を囲う様に地面から壁がにょきにょき生えてくる。
どんどん伸びて馬車を完全に覆い高さ三メートルほど、こんだけあれば十分でしょ……
「……あ、あれ? と、止まらない!?」
壁はぐんぐん伸びていく……五メートル……十メートル……
「あ、あの……もういいんだけど……」
結局、物凄く見上げる高さになって
何だろう……さっきの探知魔法といい、効果が上方修正されてる感じなんだけど……。
う~ん、まぁ今はあれこれ考えてる場合じゃないか。魔物を処理してしまわないと。
魔物達はまだむしゃむしゃしてる。
今の内に一網打尽にしてしまおう! やっぱり攻撃と言えば火かな? ファイアーボールじゃ一網打尽て感じじゃ無いよね? う~んじゃあファイアーウォールとかかな?
それじゃ炎の壁に囲まれて、そのまま燃やす感じで……
「炎よ!」
魔物を囲うように炎の壁が立ち昇る……さっき作った馬車を囲う壁と同じくらいまで……。
「やっぱり! そんな気はしたんだ! そんな馬鹿でかくするつもり無かったのに!」
やがて炎の壁が消えるとそこには焼け焦げて真っ黒になった地面だけが残った……。
「って、何も残ってない!? えっ? 魔物って倒すと消える系? って、言うかむしゃむしゃされてた骨も装備も無いよ……」
どんだけ火力高いのよ……。
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