第4話 出会い

アプリを開いた。

年齢制限もない出会い系アプリがアプリ審査を通過したことが不思議で敵わない。

アプリを開くとマイページが表示される。

俊という名で登録されている。

通知内容にあったマッチングされた相手を確認する。

年齢、性別のみ。

16歳、女でプロフィールがない。

僕も同じようなものだから、気にしない。

どうせ、サクラだろうと思いながら相手をするのが出会い系の必勝法だ。

騙されてはいけない。主導権はこちらになければ恋愛は成功しない。

まぁ、恋愛未経験の僕が言ってもいいのだろうかと思う。


早速、メッセージを送ってみる。

 はじめまして。

 徳島県に住んでいます。俊と申します。

 始めたばかりでよくわかっていませんが、よければやりとりしませんか。

 よろしくおねがいします。


と何とも無難な文章を作成してしまう。

最初はこんなのでいいだろう。

相手の出方を見ようじゃないか。


打ち終わると、僕はスマホをベットの上に放り投げた。

どうせ返信なんて来ないだろう。

しかも徳島県での相手なんてそういないし、四国の県なんて知らんだろう。

相手の女の子が同い年で、同じ出身の可能性は低い。

その二つのうち、同い年という所は一致してしまっているので、出身は違うだろう。

と、いうより出身すら書かないのはいかがなものか。

この僕ですら書いているというのに、相手は出会うつもりがないのだろう。


「あほらし」

僕は、目をつむった。


「お~い、お兄ちゃん」

「ん、愛菜か?」

「あ、起きた。もう、夜ご飯の時間だよ」

「あぁ、降りてく」

妹に自分の行動意思を伝えると、下に降りて行った。

少しのつもりが、5時前から1時間以上も寝てしまい、もう7時。晩御飯の時間になっていた。

眠い目をこすりながら、僕は1階に降りていく。


食卓には、母と妹の姿があった。

僕の分も準備されている。

僕は、静かに自分の席に座ると、「いただきます」のあいさつをした。

これはいつもの風景。平日の一コマが静かに過ぎていく。

ご飯を食べながらテレビを見る。それがこの家。

母と妹は今日の出来事の話をしたり、テレビの番組の感想を言い合ったりしている。

僕は、静かにのんびり食事をする。大体30分くらいかけて食事を終える。

よく噛んで食べようにしている。母だったか、テレビのお姉さんだったか、誰が言っていたのか忘れたが、今も守っているルールの一つだった。

咀嚼音は出してはダメと言われているが、どうするのかわからないので僕の食事ルールには載っていない。

くちゃくちゃと食事を行い終えると、僕はリビングで家族と過ごして風呂に入る。

それが僕の日常。大体この通りに実施している。

長年の習慣とは恐ろしいことに、無意識に決められた動きをしてしまう。

これが楽なのだから仕方ない。


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