第9話

真っ暗な研究室のソファーで僕は眠りこけていた。

しかし…妙な夢を見た…。

まだ、窓の外で女性たちが軽やかに歌う声が耳に残っている。


遠い記憶の中にいるような気がした。

懐かしい母の歌声に似ている気がした。


何故だか僕は泣いていた。一つまた一つ涙が伝ってソファーの上に落ちた。

僕はふと研究室の扉を開け、階段を駆け上がり、外に出た。

まぶしいく光る朝日の中でそして春の息吹が揺れる暖かい風を感じた。


生きている…生かされている…


奇跡の光が溢れている。木の葉は青々と春の到来を告げている。


そして心の中に故郷のウグイスは鳴くのだ。

山里から煙が見える。

涙が伝う。


こんなにも世界は美しいのだ。


長い冬を越えて春が来た

心のままに痛みを感じ続けた日々よ

そして今ウグイスの鳴き声を聞く

山の緑、色とりどりに咲く花々

生命の息吹の輝きよ

僕は目を閉じて深く息を吸った

太陽の喜びはそこにある

世界はこんなにも美しい


悲しみの果てに平安な時が訪れた

我が娘よどうかこんな父を許してくれよ

と涙を幾度と流したか、

自分の無力さを今抱きしめて

寒い夜を越えて幾度となく孤独に震えては酒を飲んだ。

そんな季節はもう終わりを告げる

世界はこんなに美しい


痛みや恐れ。世の中に不快な不信感を持ち続けたけれど

やがて平和な静けさの中に星が瞬き、翌朝の眩しい朝日を浴びた時に僕はその眩しさを

幸せとともに受け入れたそんな朝にウグイスは鳴いたんだ

世界はこんなにも美しい


そして今僕は新たなスタートラインに立ち、僕の人生をかけた戦いが今始まるのだ。

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