第8話
夢なのか?現実なのか?
僕は白い天井を眺めていた。
何かを掴もうとしたその弱々しい手は、虚しく空を切った。
-ここはどこだろう?
意識が戻って来たかと思ったら体が動かないことに気づいた。
「Mr.ケン?気づかれましたか?」という冷徹で無機質な声がする
Yes,僕はおぼろげなままなんとなく答えた。
「何故貴方がここにいるか?お分かりですか?」
「昨夜 エルザラジールから電話があり、空きがあるので貴方を連れてこられたんです。そして我々の治療は始まった。」
「貴方は我々の実験体になるサインはもうされましたよね?」
「え?何ですか?それは」
「貴方はエルザから何も聞かれてらっしゃらないのですね?」
「な、何をですか?」
「貴方は一度死なれたんです。」
「死にたいのであれば、貴方は望み通りに死ぬことができます。ただ意味のある死に方をするために生かされたんです。いわばちょっとした社会貢献ですね。あまり気にされれなくても良いかと。」
「社会貢献?死ぬことが…?」
「はい。貴方は今から登録された被験体NO.2440841KENです。我々は貴方をKENと呼ばせていただきます。では。ごゆっくり。」
白い壁があり、全てが白い部屋の向こうから、女の人たちの声が聞こえる。歌っている。楽しそうに歌っている。まるで花を摘む少女のように軽やかに。
「D r.マーキュリーと申します。ここではKENさんを3ヶ月診させて頂きます。」
先生、僕は一体何をしにここへ来たのでしょうか?
「それについては被験体の貴方には関係があるかもしれないし、もしくは関係ないことでもあります。つまりは貴方はもう貴方であって貴方ではないということしか伝えられませんね。」
今はいつで何処なんでしょうか?
「そういうことは我々には関係ないことです。」
「では説明から始めましょう。貴方は例えば森の中を見て何を思いますか?」
森?ただ木が沢山あって、道があって…
「そう、問題はその木です。」
「私が言いたいのは、極めて科学的なことであって森に癒されるとかパワースポットとか?曖昧なことではありません。曖昧な感情は被験体の貴方には一切関係ないことです。
私は貴方の心とかにはまるで興味がないのです。」
Dr.マーキュリーは続けた。
「木と木の間には、空間がある」
「空間は広がりもすれば、縮みもすると仮定しましょう。」
はい。
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